私はいったい、何と闘っているのか (2021):映画短評
私はいったい、何と闘っているのか (2021)ライター2人の平均評価: 3
日本全国のカッコ悪いお父さんたちへの応援歌
頭の中で思い描く自己イメージだけはカッコいいが、実際は地味で不器用で気が弱いフツーのオジサン。そんな主人公が、愛する家族や職場の仲間のために日々奮闘するも、やることなすこと次々と裏目に出てしまう。頼れる夫でありたい、誇らしい父親でありたい、尊敬される上司でありたい。そう願いながらも上手くいかず、いつも空回りしてしまう主人公を見つめる眼差しの暖かさにホッとする。別にカッコ悪くたっていい、真面目で誠実で優しければそれで充分。さながら、日本全国の自信を失ったオジサンたちへエールを送る作品と言えよう。安田顕の冴えないお父さんっぷりがまた絶妙だ。
ヤスケンとウイカの芸達者ぶりが救い
つぶやきシロー原作らしく、安田顕演じる本音を言えない主人公の妄想&モノローグが炸裂。ヤスケンの巧さもあって観ていられるのだが、そこに共感できるかというと、それは別の話で、家庭の設定に関してはファンタジーに近い。また、たびたび登場するカツカレーなどのハズシや、沖縄のエピソードを盛り込んだことによる散漫さなど、とにかくバランスが悪い。ほぼ出オチに近い伊集院光や「俺の話は長い」とは雲泥の差な小池栄子のムダ遣いも目立つが、本作同様に冗長だった『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』に比べれば、マシな仕上がり。そんななか、じつは小劇団出身なファーストサマーウイカの芸達者ぶりは見どころ。