余命10年 (2021):映画短評
余命10年 (2021)ライター2人の平均評価: 4
ヒロインを取り巻く家族や仲間とのドラマにも注目
王道すぎるタイトルに、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の岡田惠和の脚本。とはいえ、『青の帰り道』など、じつは青春群像劇が巧い藤井道人監督作なので、小松菜奈演じるヒロイン・茉莉を取り巻く家族や仲間とのドラマがいい。さらに、彼らを演じる役者陣がすべて主演クラスであることに、作品が放つパワーを感じずにはいられない。RADWIMPSによる劇伴も、藤井監督が得意なファンタジー演出との相性がいいが、坂口健太郎演じる和人の設定などが異なるため、原作とは別モノと考えた方がベターだ。また、四季の移り変わりを捉えるため、昨今の日本映画では珍しく、じっくり丁寧に撮られており、そんな作り手の誠意に★おまけ。
新境地
藤井道人監督の新境地を感じさせる恋愛劇。
シリアスな場面になればなるほど、ファンタジックな空気感が漂う藤井監督の演出はその時々で、機能したり、しなかったりという感じでした。しかし、今回はラブストーリーということで、クライマックスの盛り上がりとファンタジックさが高いレベルで見事に融合。今後も藤井監督のラブストーリーが見たいと素直に感じさせる映画に仕上がっています。
小松&坂口の主演コンビを筆頭に共演陣がやさしい演技を披露していて、とても暖かい感覚が残ります。RADWIMPSの音楽も良かったです。原作からはエッセンスだけ抽出した形なので、映画は映画の『余命10年』になっていて楽しめます。