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声もなく (2020):映画短評

声もなく (2020)

2022年1月21日公開 99分

声もなく
(C) 2020 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEWIS PICTURES & BROEDMACHINE & BROCCOLI PICTURES. All Rights Reserved.

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

なかざわひでゆき

自分を守るためだからと不正や理不尽を見過ごしてもいいのか?

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 発声障害で言葉を喋れない青年と、片脚の障害で歩行が困難な中年男性。まともな職に就くことのできない彼らは、生活のため犯罪組織の下請けとして死体の始末をしている。頼まれたからやっているだけ、だから俺らは悪くない。そう自らに言い聞かせていた2人が、組織に誘拐された幼い少女を預かる。家父長制の根強い韓国社会で、女の子だからという理由で父親が身代金の支払いを渋っている少女の境遇がミソ。社会から不要と見做された者たちのささやかな心の触れ合いを繊細なタッチで描きつつ、自分を守るためだからと強い者に屈服し、不正や理不尽を見過ごしていいのか?という問いを投げかける。これは日本人にとっても重要なテーマだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

「疎外された者たち」の奇妙な夏のバカンス

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

濃厚な味がデフォルトな韓国犯罪ミステリー系の中で、爽やかなトーンが基調の「夏の映画」なのが異色&出色。オフビートな可笑しみはコーエン兄弟が参照先か。同時に東アジアならではの情感が『万引き家族』的な疑似家族の展開に込められ、ユ・アイン繋がりの『バーニング』の分断や亀裂、後半は『シベールの日曜日』を彷彿させるなど、寓話性とリアリティを接続する独特の設計が秀逸すぎる。

これが初長編のホン・ウィジョン監督は82年生の“キム・ジヨン世代”。最も近い位置にある映画は『私の少女』か? ちなみに監督はジブリ好き――宮崎駿のファンらしく、確かに牧歌的な風景から少女が異界に入る回路は『千と千尋の神隠し』だ!

この短評にはネタバレを含んでいます
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