ユンヒへ (2019):映画短評
ユンヒへ (2019)ライター2人の平均評価: 4
岩井俊二の影響も色濃い白銀のラブストーリー
シングルマザーとして韓国に暮らす女性ユンヒのもとへ、遠く離れた日本から届いた一通の手紙。それをこっそり読んで、母親の封印された初恋を知った女子高生の娘セボムは、手紙の送り主である女性ジュンとユンヒを引き合わせるため北海道行きを提案する。雪深い真冬の小樽を舞台に、周囲の無理解と社会の偏見のため引き裂かれ、望まぬ人生を歩まざるを得なかった2人の女性の再会を描く。なんという美しさ、なんという繊細さ、なんという奥ゆかしさ。長い時を経ても変わらぬ女性同士の深い愛情と共に、抑圧されたマイノリティの孤独と哀しみが静かに浮かび上がる。偏見を持たない自由な若い世代に希望を託す優しさと暖かさもまた心地良い。
雪の下には暖かなものが隠されている
すべてを雪に覆われて、その下に本当の姿を潜めている北の町。その風景が、想いを外に出すことなく、しかし失うことなく、ずっと胸の中に秘め続けている女性2人の姿に重なる。そして、積もった雪の下に隠されているものは、こちらの予想とは違う、とても温かいものなのではないかと思わせる。
もう若くない2人が、お互いに離れて暮らしていながら、ただ心の中で愛し続けるのだが、映画はそれを肯定的に描く。2人が自分で選んだ道を歩いているので、周囲もそんな2人を否定しない。愛するということは、結ばれて共に暮らすことが到達点ではなく、こういう形であっても意味があるのではないか、そんなふうにも感じられてくる。