シルクロード.com -史上最大の闇サイト- (2021):映画短評
シルクロード.com -史上最大の闇サイト- (2021)ライター2人の平均評価: 3.5
モラルなき理想主義の危うさ
公権力が商取引の自由を規制すべきではないとのリバタリアニズム的思想に則って、麻薬から武器まで何でも販売する違法な闇サイトを立ち上げた若きIT起業家。パソコンの扱い方もよく分からない時代遅れなアナログ人間で、犯罪捜査のハイテク化に抗って現場主義にこだわる一匹狼のベテラン刑事。何もかもが対照的なようでいて、社会や組織のルールに縛られない理想主義者という点で実はよく似た者同士の攻防戦が展開する。実在した闇サイト「シルクロード」の顛末を下敷きにした実録犯罪ドラマ。頭でっかちなエリート青年と叩き上げの曲者オヤジの丁々発止な駆け引きはなかなか面白く、モラルなき理想主義の危うさにも考えさせられる。
複雑化する現代の詰将棋、そのスリルとリアル
バーチャルとリアル、デジタルとアナログ、理想と現実、善と悪など、正反対のものが複雑に絡み合う、そんな現代をリアルにとらえた本作。
サスペンスとして面白いのは、PCに弱い捜査官とオンライン上で生きる悪党の攻防だ。前者は足で動き、後者は知恵で立ち回る。それが詰将棋のように展開され、やがて王手へと至るのだが、その過程が実にスリリング。
人は善でありたいと思う一方で、退屈なルールに反発し、悪であることを自由と考える。そんな二面性を自覚したとき、何を行動の基準とするべきか?監督が得意とするドキュメンタリー的な手法が生き、ラストではそれを考えさせずにおかない。力作。