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夕方のおともだち (2021):映画短評

夕方のおともだち (2021)

2022年2月4日公開 115分

夕方のおともだち
(C) 2021「夕方のおともだち」製作委員会

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

森 直人

「マス廣木」の一方、「コア廣木」がここに居る

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ワーナー作品『ノイズ』公開の翌週に登場した廣木隆一監督の新作。要再評価の傑作『君といつまでも』(95年)以来となる山本直樹マンガの実写化だ。ハードSMを題材に取った原作はエグい描写も炸裂するが、映画版はアブノーマルとされる性の世界を日常に溶け込むニュートラルな視座で描き、爽やかですらある人間ドラマに仕上げた。

海辺の町のロケ(福島県いわき市の模様)も良く、澄明感と閉塞や寂寥の両方を詩的に醸し出す。その後景で不毛な市長選が繰り広げられるアルトマン的風刺も絶妙なスパイス。主演の村上淳が素晴らしいのはもちろん、菜葉菜を始め、鮎川桃果、ワイヨリカのAzumi、烏丸せつこと女性たちがやはり印象に残る。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

己の人生と性癖に迷い始めた中年M男の危機

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 水道局に勤める地味で真面目な独身中年男の主人公は、もはや被虐的な暴行プレイでしか快楽を得られない重度のドM男。そんな彼が「中年の危機」ならぬ「M男の危機」に見舞われ、己の人生と性癖に迷いが生じ始めたことをきっかけに、行きつけのSMクラブで働く女王様と奇妙な信頼関係で結ばれていく。なかなかハードな性描写と、どことなくほのぼのとした語り口のアンバランスがユニークな作品。混沌とした現代社会で少数派が日々感じる息苦しさを投影しつつ、人それぞれの自由な「愛のカタチ」を肯定的に描いていくストーリーに共感が持てる。文字通りの体当たり演技に挑んだ村上淳にも賛辞を贈りたい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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