鈴木さん (2020):映画短評
鈴木さん (2020)閉塞感に包まれた日本の未来を占う不条理コメディ
20年間も姿を隠した国家元首カミサマを個人崇拝する近未来の日本。国民には美しき国家に奉仕することが求められ、その義務を果たさねば人権も保障されない。結婚しない男女は僻地へ追放か兵役が課される。老人ホームを営む独身のヒロインは、たまたま助けた浮浪者の男性・鈴木さんとの偽装結婚を図るのだが、その鈴木さんに敵性外国人スパイの嫌疑がかけられる。ブラックなユーモアを盛り込んだ不条理コメディ。ディストピアな日本の近未来像が、今の現実とさして変わらなく感じられるのがまた皮肉だ。現代日本社会を包み込む暗い閉塞感を投影しながら、その先に見えてくる不穏な未来を占う作品。絵空事と思えないような説得力がある。
この短評にはネタバレを含んでいます