母へ捧げる僕たちのアリア (2021):映画短評
母へ捧げる僕たちのアリア (2021)また別の視点からフランスで生きる移民たちを描く
現在のフランスの移民たちの生活を描く映画といえば、ラジ・リ監督の『レ・ミゼラブル』も、ファニー・リヤタール&ジェレミー・トルイユ監督の『GAGARINE/ガガーリン』も、独創的な視点から独自の世界を描いていたが、本作もまたこの2作とは異なるアプローチで、まったく味わいの異なる世界を創り出す。低所得者たちが住む集合住宅で暮らし、昏睡状態の母親を自宅で看護し、定職はない、という4人兄弟の末っ子の少年の日々を描くが、4人の生活は暗くない。生き抜くために常に動き続けなくてはならず、絶望している暇がない。そこに、たっぷりした日差しが降り注き続ける。そして、少年は誰かに向かって歌うことの喜びを知る。
この短評にはネタバレを含んでいます