デリシュ! (2020):映画短評
デリシュ! (2020)ライター2人の平均評価: 4.5
目にもハートにもアピールする
タイトル通りデリシャスな映画。予想以上に面白く、お宝を発見した気分。才能豊かな宮廷調理人がクビにされ、料理への情熱を失ったところへある女性が現れて、新しいことにつながっていく。ストーリーもキャラクターもしっかりしていて、頑固でプライドが高いが繊細なところもあるこの主人公にずっと思い入れができる。あの時代のフランスで、貴族と平民にとって「食」がどんなものだったのかを見られるのも興味深い。このすぐ後に革命が起きるのだと思うと、貴族らが傲慢でとびきり嫌な奴らに描かれているのも痛快。食べ物を用意した人、それらを美しくとらえた撮影監督にも大拍手。目にもハートにもアピールする映画。
森から調理台へと続くヨーロッパの色調が美しい
ヨーロッパの森の色が、全編を通して持続する。18世紀のフランス、貴族の邸宅で働く腕のいい料理人がある出来事から職を辞し、紆余曲折を経て、史上初のレストランを誕生させることになるのだが、彼の調理台の上も、彼が暮らす人里離れた一軒家も、その周囲の樹木も、すべてが同じ、いかにもヨーロッパの森の繊細な色彩で統一されている。樹木から落ちる枯葉が、空を舞う粉雪になり、パン粉の上に落ちる小麦粉に重なる。
撮影は『橋の上の娘』『フェリックスとローラ』などパトリス・ルコント監督作を多く手がけるジャン=マリー・ドルージュ。まるで静物画のような調理台の上の情景が、主人公の心情を反映して変化していく。