天間荘の三姉妹 (2021):映画短評
天間荘の三姉妹 (2021)ライター2人の平均評価: 4
死者の魂を弔い、限りある生を祝福する暖かなファンタジー
この世とあの世の狭間に存在する天空の町。交通事故で臨死状態となった少女たまえは、「もう一度現世へ戻る」か「このまま天国へ旅立つ」かを選択するため、天空の町の旅館・天間荘に滞在する。この旅館で働いているのがなぜかヒロインの腹違いの姉妹だったり、天空の町と言いながらどこにでもある漁港町だったりと、初めのうちはなにかと首を傾げるのだが、やがて町と住民の正体が明かされることで、物語の意図するところが一気に明確となる。これはいわば、理不尽に生命を奪われた死者への鎮魂歌であり、同時に生あることの奇跡を祝福する応援歌。のんに門脇麦、大島優子の芝居がまた素晴らしい。2時間半の長尺が全くダレないのは立派。
顔ぶれだけは終わらない
のん、門脇麦、大島優子、柴咲コウ、寺島しのぶという凄い並びだけでも一見の価値があると言っていいでしょう。これに三田佳子も絡みますから、これはちょっとした事件と言っていい映画ではないかと思います。『スカイハイ』の流れをくむということもあって北村龍平監督をLAから招聘したというのも、作り手の矜持を感じます。
顔ぶれの豪華さに目を奪われがちですが、いろいろと映画的な仕掛けもある物語で堪能しました。2時間半ある上映時間にちょっと身構えましたが、見始めたらあっという間でした。