反逆のパンク・ロック (1983):映画短評
反逆のパンク・ロック (1983)ライター2人の平均評価: 4.5
綺麗ごとでは済まされない、激しく切ない青春
邦題はゴリゴリな感じだが、ペット・ショップ・ボーイズの「サバービア」に影響を与えたことでも知られる青春映画。『タイムズ・スクエア』の疑似姉妹を発展させた疑似家族の話だが、決して綺麗ごとでは済まさず、同時代のドキュメンタリー『子供たちをよろしく』でも扱われたストリートチルドレンの問題に鋭く切り込む。子どもにも容赦しないペネロープ・スフィーリス監督の演出に、バイオレンスとエロを挟むプロデューサー、ロジャー・コーマンの狙いが功を奏した仕上がりに。T.S.O.L.やヴァンダルズのライブシーンに、『ウイラード』ばりに鼠を溺愛する若きレッチリのフリーの姿を拝めるレアさも含め、★おまけ。
80’sカルト名作:「棄てられた子供たち」という主題の予見性
監督のペネロープ・スフィーリスがL.A.パンクシーンの深部を取材した初長編ドキュメンタリー映画『ザ・デクライン』(81年)の次に撮った劇映画で、原題は『サバービア』。典型的なアメリカン・ファミリーの幸福から排除された子供達の疑似家族的コミュニティ。T.R.ハウスと呼ばれる廃墟では大勢のストリートキッズが唯一の解放区として共同生活を営んでいる。
ドブネズミを肩に乗せたラズルを演じるのはレッチリのフリー。まだFEARのメンバーだった頃か。戦後アメリカの「夢」の崩壊を赤裸々に抉りつつ、居場所を奪われたティーン群像は、ガター・パンクスを映し出した『ザ・デクラインⅢ』(98年)の壮絶へと繋がっていく。