こんにちは、母さん (2023):映画短評
こんにちは、母さん (2023)ライター2人の平均評価: 4
意外なまでに心に静かに染みわたる後味
日常の些細な出来事を積み重ね、ドラマチックな瞬間よりも、登場人物に温かく寄り添うことを優先した演出で、家族ドラマとしてまっすぐな共感を誘う作り。監督の込める強いメッセージも、メインの物語を邪魔しない奥ゆかしさが好印象。
時折、時代として違和感のあるセリフもあるが、原作が戯曲のせいか舞台のようにするりと受け入れられる。
メインの舞台である足袋屋から自宅へ続く間取り、店の前の通りの捉え方に「とらや」の記憶もよぎりつつ、ローアングルのカメラや道具の配置など、小津安二郎への目配せが明らか。日常を映すうえで、それが効果的にはたらき、日本映画のひとつの伝統に浸るだけでも貴重な時間に。
こんなにも軽やかな
山田洋次監督91歳にして90本目の新作映画は実に軽やかでチャーミングな一本でした。
吉永小百合×大泉洋×永野芽郁の3世代の組み合わせも良かったです。”物語のスタートから祖母”の役という吉永小百合を実年齢相応のキャラクターにしたというのも実はかなり英断ですね、本来こうあるべきで、変に神格化させない方がいいと思います。そのうえで、それに合わせてのファッションや恋愛などが描かれていて、とても自然でした。吉永小百合と山田洋次監督のこの路線をもっと見たいと思いました。