高速道路家族 (2022):映画短評
高速道路家族 (2022)ライター2人の平均評価: 4
不寛容な社会に生きる人々の痛みが刺さる
小さな子供を抱えて高速道路のサービスエリアを転々としながら暮らすホームレス一家と、経済的に余裕のある中年夫婦(といっても中古家具屋を経営する平凡な中産階級なのだけど)の関わりを通じて、韓国社会の様々な歪みを浮き彫りにした作品。『パラサイト 半地下の家族』と似ている点も少なくないが、しかし同作が経済格差の生み出す深い溝にフォーカスしていたのに対し、ここではその溝を埋めるにはどうすればいいのかを模索していく。どこかほのぼのとした語り口は人情コメディのようだが、だからこそ不寛容な自己責任社会で居場所を失ったり、抑圧されたりしながら生きる人々の痛みが突き刺さる。見る者の想像に委ねる結末も秀逸だ。
家族の幸福はサービスエリアにある!?
『パラサイト 半地下の家族』と同様に、ベースとなっているのは格差社会の現実。そこに高速道路のホームレス家族という設定を加えた点が絶妙。
なるほど、高速のサービスエリアには人が集まるし、食べ物にも困らない。そんな環境下で明るく逞しく生きていく家族にも変化のときが訪れるのだが、そこがドラマ的に面白く、無邪気な子どもたちがこの“変化”に説得力をあたえる。彼らを迎え入れた初老夫婦のキャラにも人生の機微が見えて、グッとくる。
これがデビュー作となるイ・サンミン監督は各キャラクターの人間性を損なうことなく、味のある悲喜劇を積み重ねた。これは巧い。