ソウルに帰る (2022):映画短評
ソウルに帰る (2022)ライター2人の平均評価: 4.5
予想しなかったラストが心に重くのしかかる
ダヴィ・シュー監督は、フランスで養子として育てられた韓国生まれの女友達の話にインスピレーションを得て脚本を書いたとのこと。彼女が実の父に会うため韓国に行く時も付き添った。メロドラマになりがちな設定なのにそこに陥ることなく、複雑に揺れる主人公の気持ちが描かれているのは、それが大きいだろう。予想しなかったラストは、心に重くのしかかる。主演のパク・ジミンはビジュアルアーティストで、演技はこれが初挑戦。にもかかわらず、とりわけクライマックスの感情的なシーンでは圧巻の演技をしてみせる。それ以外の静かな瞬間ひとつひとつにもリアリティを感じさせる、とても繊細な、完成度の高い人間ドラマ。
ルーツ探しかと思いきや、クールな自分発見のアプローチに感動
主人公フレディは、幼い頃に遠くの国に養子に出され、その国でアイデンティティを築き「たまたま」祖国に戻ってきた…という状況。なので実の両親との再会にも特に本気になれないし、当然のごとくストーリーが“お涙頂戴”に流れない。だからこそフレディが次にどんな行動に出るか、予測不能なムードで観ているこちらの意識を集中させる。実際、終盤の展開はけっこう飛躍的で素直に驚いた。
どこか不機嫌そう。本心を露わにしないように見える。そんなフレディのキャラに、演技初挑戦が見事にハマった。
外国語をあえて訳さないコミュニケーション、それをクリアした友情の絆…と、この映画ならではの斬新な切り口も、やたら愛おしい。