ボストン・キラー:消えた絞殺魔 (2023):映画短評
ボストン・キラー:消えた絞殺魔 (2023)ライター2人の平均評価: 3
連続絞殺事件の真相にゾッとさせられる
女性13人が絞殺されたボストン絞殺魔事件を、実際に事件を追った二人の女性記者の視点で描く。不手際が重なる警察、警察をかばおうとする新聞社の上司、応援はしてくれるけど忙しくなると不機嫌になる夫など、じっとりとした男社会の中で“女性の敵”を追う主人公が描かれる前半から、逮捕された犯人が実は真犯人ではないことが判明していく後半(実際に冤罪説がある)まで、タバコをバカスカ吸いながら真相に迫っていくキーラ・ナイトレイに引っ張られるように見入ってしまう。複雑怪奇な事件の向こう側にある、真相めいたものにゾッとさせられる。サスペンス的な迫力はないが、ジャーナリストものの佳作。輪転機の描写を久しぶりに見た。
悪名高き事件を女性の視点から語り直す
この悪名高き連続殺人事件は、男性キャスト中心の「絞殺魔」(1968)でも描かれた。それから50年以上を経た今作は、女性記者を主人公に据え、新聞社内部の女性差別や、女性がキャリアと家庭を両立することの難しさなど、社会的な要素にも触れているという意味でモダン。我が身を危険に晒しながらも取材をする女性記者をキーラ・ナイトレイとキャリー・クーンが演じるのだが、「不都合な理想の夫婦」でもすばらしかったクーンの見せ場が少ないのはやや残念。トーンやビジュアルには、デビッド・フィンチャーの「ゾディアック」の影響が感じられる。「スポットライト 世紀のスクープ」には及ばないものの、安定したジャーナリスト物だ。