猫と、とうさん (2022):映画短評
猫と、とうさん (2022)ライター2人の平均評価: 3.5
猫と一緒の暮らしと「有害な男らしさ」からの脱却
邦題は『猫と、とうさん』。原題も「Cat Daddies」。あえて猫好きな「男性」ばかりを取材したドキュメンタリーだが、そこには女性監督ならではの狙いがある。もともと猫が嫌いだった監督の夫は、猫を飼い始めたことで思いやりや優しさが増したという。確かに、猫は犬と違って人間に従順ではなく、個体差があるとはいえ基本は気まぐれで神経質な動物。むしろ飼い主側の献身や忍耐が問われる。本作では猫と飼い主の微笑ましい日常をカメラに捉えつつ、猫との暮らしを通して自らの愛情深さや繊細さをポジティブに受け止め、いわゆる「有害な男らしさ」から脱却した男性たちの変化を見つめていく。これはなかなか面白い視点だ。
猫の撮り方にも猫への愛が滲み出ている
いわば、2016年のトルコ映画「猫が教えてくれたこと」のアメリカ版。どちらの映画でも人間と猫の心のつながりが描かれるが、この映画は人間を男性に絞る。しかも、あえて消防員、トラック運転手、スタントマンなどマッチョな職業に就く男性を出してくることで、「ストレートの男性が猫好きというのは奇妙」という偏見に斬り込むのがユニーク。明らかに猫好きの視点で撮影されている猫たちの映像はどれもかわいらしく、魅力的。その猫たちを愛する人々を見るのも心が温まる。猫を通じて人と人がつながるのも美しい。それだけで十分観客は何かを得られるので、最後に出てくるメッセージ的な語りは不要だったかも。