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ふたりのマエストロ (2022):映画短評

ふたりのマエストロ (2022)

2023年8月18日公開 88分

ふたりのマエストロ
(C) 2022 VENDOME FILMS - ORANGE STUDIO - APOLLO FILMS

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.5

大山くまお

音響のいい映画館で観たい人情親子喜劇

大山くまお 評価: ★★★★★ ★★★★★

オーケストラの指揮者という同じ職業をなりわいとする老境の父と絶頂期の息子。ふたりの間にはどうにもならない確執があったが、さらに決定的な出来事が起こって……という家族の物語。とはいえ、構えて観たら肩透かしをくらうかも。主人公の親子はずっとまじめな顔をしているけど、これはれっきとしたコメディー(「喜劇」と呼んだほうがしっくりくる)。描写も人間関係も物語も、けっして重くなりすぎない。役柄を老舗の職人や板前に置き換えたら、松竹の人情喜劇とかグルメ漫画とかにありそうな感じ。クライマックスにも思わず笑ってしまった。豊穣なクラシック音楽がふんだんに流れるので、冷房のきいた音響のいい映画館で観たい一本。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

世の東西を問わぬ「父親と息子」問題の本質に迫る

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 オーケストラ指揮者という同じ職業ゆえ、お互いをライバル視してしまう父子。しかも、父親は全盛期を過ぎた過去のマエストロ、息子は父の名声を超えた今が旬のマエストロだ。そりゃ、親子関係も一筋縄ではいかぬだろう。そんな2人がある事件をきっかけに、いよいよ本音で向き合うことになる。世の東西を問わず、昔から母と娘に比べて父と息子の関係はギクシャクしがちとされるが、ここではその普遍的な問題の本質を考察。世代間に受け継がれる家父長制的な「男らしさ」の弊害への示唆は大いに納得だが、しかし惜しむらくは尺が短すぎることか。もう少しじっくりと丁寧に父子の心理を炙り出した方が、ラストの感動も更に大きかったはずだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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