クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド (2022):映画短評
クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド (2022)ライター3人の平均評価: 3
アメリカン・ロックの“雄”の、最初で最後の大勝負
1960年代後半の音楽シーンを語る上で、ルーツロックへの回帰は外せない。その意味でもなかなか貴重なドキュメンタリー。西海岸出身ながらサザン・ロックへと傾倒したCCRの来歴と、キャリアの頂点とも呼ぶべき1970年の“欧州ツアー”を追ってゆく。
後半、ロイヤル・アルバート・ホールでの伝説ライヴが収められているが、英国はとりわけブルース・ロック流行りだったわけで、そこに本国から乗り込んでいった構図だ。「雨を見たかい」(Have You Ever Seen the Rain?)をリリースする前なのだが、「プラウド・メアリー」を筆頭に名ナンバー揃い。ジョン・フォガティのワイルドな歌声に改めて鷲掴みに。
ジェフ・ブリッジスがナレーション、っていかにも。
最初にお断りするが僕はCCRにほぼ関心がない。以前ベスト盤みたいなのを聴いて「ただのブルース・ロックじゃないか」と思ってから余計にだが(「プラウド・メアリー」「ミッドナイト・スペシャル」といった超有名曲はとりあえずとして)。これは本国アメリカで頂点を迎えた’69年の翌年、イギリスのロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ映像をリマスターしたものだが、字幕付きで聴くと、初期の「俺、南部の黒人音楽大好きなんだよぉ(行ったことはないけど)」から、時の政治にアプローチする骨太さを獲得していったことにも気づく(コメントはやたらお利口さんぽくないが)。ま、そういう興味で過去の音楽を知るのも悪くないでしょ?
ヨーロッパにやってきた1970年のトラヴェリン・バンド
また凄いお宝が発掘された。1970年1月、人気絶頂期のCCRのパフォーマンスが劇場で体験できる。カリフォルニア野郎達4人組が、最初で最後の欧州ツアーに繰り出し、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールへとたどり着く。50年も埋もれていた記録フィルムが埃を払って開封だ。
前半は少年期に結成されたザ・ブルーベルベッツなどバンドのバイオグラフィーで、こちらも貴重。後半は約50分ノンストップ。「トラヴェリン・バンド」から始まり、曲間も短くシンプルに畳み掛けるエナジー爆発の演奏。一連の4K復元ライヴ映画は音楽ファンにとって最高のタイムマシンだ。このデジタルの恩恵には、良い時代になったなあと呟きたくなる。