シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ~ロックと家族の絆~ (2023):映画短評
シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ~ロックと家族の絆~ (2023)ライター2人の平均評価: 4
ロックンロールは、こんなにも、温かい
今年1月の鮎川誠の急逝にショックを受けた身としては、シーナ&ロケッツというバンドの本質が本作で語りつがれるのは嬉しいかぎり。
鮎川とシーナ夫妻の歩みをたどった物語から見えてくるのは、ロックのワイルドなイメージに縛られない生。シーナがしばしば口にする、生活とロックの一体化は鮎川の飾らない人柄はもちろん、家族の在りようにも表われ、娘たちとのふれあいの基盤にもなる。
ステージでのエネルギッシュなプレイも、孫娘と一緒に歌う歌も、同一線上で鳴っている、そんな自然さがいい。夢を追うことでかたち作られていった、素敵な家族の物語である。
なぜ鮎川誠はこんなに長く、太くロックンロールできたのか?
セックスもドラッグも無縁だけど、どこまでもロックンロールな生涯を貫いた鮎川誠とシーナ夫妻の家族を追ったドキュメンタリー。悪徳と退廃にまみれて朽ち果てていったロックミュージシャンも少なくない中、どうして鮎川たちがこんなに長く、太く、活動を続けてこられたのかが、この作品を観るとよくわかる。あまりにもハートフルで、あまりにも優しく、あまりにも愛情に満ちた家族との生活に根ざしているのが、鮎川とシーナのロックンロールだったということ。家族の支えは創作者にとって何者にも代えがたい力になる。日本のロックシーンを切り開いてきたのは団塊世代であり、彼らが後期高齢者になっている現実も映像を通して浮かび上がる。