ニューヨーク・オールド・アパートメント (2020):映画短評
ニューヨーク・オールド・アパートメント (2020)ライター2人の平均評価: 3.5
どこか山田太一風のニューヨーク移民物語
ペルーからニューヨークにやってきた母とティーンエイジャーの息子2人が主人公。多民族都市のはずなのに、寛容さはほとんどなくて、どこか夢見がちな母は必死に働くけど生活は楽にならず、息子たちはどこにも居場所がない。そんな街の片隅のホコリのような彼らが心惹かれたのが、クロアチアから移民してきた若い美女。だけど、彼女にはある秘密があった。息子たちの青春は悲惨だけど、なんとかしてマシになろうと悪戦苦闘している様は、どこか山田太一のドラマにも通じるところがある。ほんのり明るいラストにも好感。支配欲に満ちた中年男性たちがひたすら醜い。ラマはペルーの国旗に描かれている動物だと覚えておこう。
ニューヨークという街がさまざまな顔を見せる
誰もが負けていない。あきらめずにトライし続ける。それが気持ちいい。ニューヨークで生きる、ペルーからの不法移民の母親とティーンの息子2人。彼らの生活には過酷な部分もあるが、不法移民を取り巻く厳しい現実に重ねて、母親の奮闘や、息子たちの初々しい恋、それを経ての成長が描かれるので、ツラいだけの話にはならず、物語は常にエネルギーに溢れている。
彼らの生活と一緒に描かれるニューヨークという街のさまざまな顔も見もの。自転車でのデリバリー、深夜のテイクアウトの食料品店、移民のための英語学校、高級レストラン、コールガールまで、この街に溢れる多種多様な人々の熱気が伝わってくる。