ファミリー・ディナー (2022):映画短評
ファミリー・ディナー (2022)ライター2人の平均評価: 3
アリ・アスターっぽさ全開のオーストリア産フォーク・ホラー
肥満体型にコンプレックスを抱く10代の少女が、有名な料理研究家の叔母のもとでイースターの週末を過ごし、ダイエットに挑戦しようとしたところ、とんでもない光景を目の当たりにする。キーワードは古代宗教の儀式…ということで、その淡々とした不穏な空気感からしてアリ・アスターっぽさというか、A24っぽさが全開のオーストリア映画。 容易にオチが想像できるうえ、なんの捻りもないのは玉に瑕ではあるものの、しかし『ヘレディタリー/継承』と『ミッドサマー』を足して割ったような雰囲気は嫌いじゃない。あと、劇中に出てくる料理の数々が最高に美味しそうなので、ダイエット中もしくは空腹での鑑賞は危険ですな(笑)。
寒く湿った荒地で、事態は静かに進んでいく
寒くて暗い湿った風景が魅了する。欧州オーストリア、街から遠く離れた、樹木がまばらに生えている荒地のような土地。昼も大気は蒼く、冷気は室内にも忍び込む。冒頭、カメラはその空気を時間をかけて映し出す。起きること自体は定番通りなのだが、この土地で起きるからこその独特な味わいを持つ。
その出来事の周囲には多種の要素が盛り込まれている。ふくよかな体型の自分に自信が持てない少女の、過敏な心の動き。彼女が訪れた料理研究家の叔母が傾倒する、古代の食文化。叔母の思春期の息子と、叔母の再婚相手の間で高まる緊張。4人が揃うファミリー・ディナーにいつも奇妙な違和感が漂うのは何故なのか。そして破局がやってくる。