緑の夜 (2023):映画短評
緑の夜 (2023)ライター2人の平均評価: 3.5
闇の中を突き進むアジア版『テルマ&ルイーズ』
草案は『テルマ&ルイーズ』に似ていたと監督は語るが、それも納得。本作はフィルムノワールのような緊張感とともに、女性たちの逃避行を切り取っていく。
“緑色の髪の女”の奔放さに刺激される、年上のヒロインの心の変遷を描出。彼女たちの姿をとおして、家父長制の下の女性の現実が浮かび上がり、女性を物のように扱う男権社会に対する反抗がドラマを動かす。これは現代の日本にもリンクするテーマではないか。
陰のあるファン・ビンビンも、自由を体現したイ・ジュヨンも、それぞれに魅力的で、ハードボイルドな物語の中にしっかり映える。“ガム”“許す”というキーワードに注目して、観てみて欲しい。
夜を疾走する女性2人の味わう感覚が伝わってくる
束縛するものを断ち切ったばかりの女性2人が、オートバイに乗り、目的地もなく夜の街を疾走する時、彼女たちの味わっている感覚が画面から伝わってくる。風景は砕けて背後に飛び去る。地軸は垂直ではない。いきなり広がっていく開放感、その底にある曖昧な不安、けれども風は心地よい。そうした感覚を得て、「何を怖がっているの?」と問われ続ける主人公が、その答を見つける。
撮影は、『ラスト・サンライズ』『宇宙探索編集部』などの中国映画を撮るベルギー出身のマティアス・デルヴォーと、韓国映画に加え『在りし日の歌』など中国映画も手がける韓国出身のキム・ヒョンソク。海外出身の撮影監督たちが、中国の夜と昼を切り取る。