PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~ (2023):映画短評
PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~ (2023)ライター2人の平均評価: 4.5
日本社会の今をリアルに映し出すことで説得力を増した青春ドラマ
eスポーツの全国高校生大会に挑んだ男子高校生チームの実話を描いた青春ドラマ。題材が題材なだけにテンション高めな明るい熱血スポ根映画かと思ったら、良い意味で期待を裏切られた。それぞれ性格も環境も全く異なり、普段は学校内でも接点のない3人だが、しかしいずれも家庭環境に少なからぬ問題を抱えており、その日常はキラキラの青春から程遠い。少年たちを囲む疲れ切った大人たち、その背景に広がる日本社会の息苦しい閉塞感。そこをきっちりと描いているからこそ、これから世の中へ出ていく若者たちへのエールが際立つ。勝ち負けにこだわるな!そんなことより思いっきり遊ぼうぜ!というメッセージには共感しかない。
じつは副題が重要なキーワード
いかにも『ロボコン』の古厩智之監督作らしい、低体温から始まるスポ根青春映画。前作『のぼる小寺さん』でも描かれた、何かに夢中になることで主人公たちが熱を帯びていく過程が見どころなので、王道スポ根の熱量や展開を求める人にとってはモノ足りないかもしれない。とはいえ、eスポーツの知識がなくても、すぐ入り込めるロケットリーグ(クルマによるサッカー)の試合展開にクギ付け。そして、奥平大兼と鈴鹿央士に加え、『遠いところ』に続いて「何者!?」と思わせる花瀬琴音の芝居に惹きつけられる。じつは副題が重要なキーワードであり、今回も意外なところに刺さり、いろんな意味で余韻を残す秀作といえるだろう。