愛のゆくえ (2023):映画短評
愛のゆくえ (2023)孤独と喪失感を抱えた少女の成長を幻想的に描いた佳作
凍てついた北海道の果てしない大雪原と、殺伐とした大都会・東京の薄汚れた街並みを対比しながら、思春期の複雑な年頃に母親を亡くした少女の心の旅路を描く。家族や学校や地域社会の呪縛と息苦しさ、そこから解き放たれたいと願う自由への渇望、複雑な想いを向けていた母親を突然亡くした喪失感、父親を失い母親に育児放棄された幼馴染の少年との友情。様々な感情が混沌と渦を巻く中、少女は血の繋がらない家族の形を知り、社会から爪はじきにされるマイノリティへ眼差しを向け、やがて孤独を乗り越えていくことになる。その静かだが確かな自我の目覚めを、幻想的かつ繊細な筆致で描く宮嶋風花監督の感性がとても好きだ。
この短評にはネタバレを含んでいます