梟-フクロウ- (2022):映画短評
梟-フクロウ- (2022)ライター2人の平均評価: 4
史実からヒントを得た巧妙な韓流歴史ミステリー
清国の人質となっていた王世子が、帰国からほどなくして謎の死を遂げた…という李氏朝鮮時代の史実をベースに、その王世子の暗殺現場をたまたま「目撃」してしまった盲目の鍼灸師が、真相の究明に乗り出すという歴史ミステリー。血生臭い陰謀の渦巻くこと英国王室と双璧な朝鮮王朝の残酷人間模様も然ることながら、実は暗闇だとうっすら目が見えるという主人公の秘密がスリルとサスペンスを盛り上げるうえで絶妙に機能している。保身のために権力者の悪事を見て見ぬふりする連中と、命の危険を顧みず僅かな視力を頼りに正義を全うしようとする主人公の、果たしてどちらが「盲目」なのか?というテーマもずっしりと重い。
見ないフリばかりでは、正しく生きていけない
日本ではなじみの薄い17世紀の朝鮮史に題材を得ているが、これがミステリーとして、なかなか面白い。
宮廷で働き始めた目の不自由な鍼灸医が殺人事件を“目撃”するという設定。殺されたのが王の跡取りなのだから、事態は深刻だ。目撃者としては心もとないうえに、殺人の濡れ衣をも着せられかける、そんな主人公の奔走がスリリングで、目を奪われる。
ドラマ面にも味があり、見て見ぬフリをして権力の世界を生きようとする主人公が真実を正面から“見る”ようになるまでの姿に、人間性が浮かび上がる。繊細な音の演出ともども、じっくり味わいたい。