美と殺戮のすべて (2022):映画短評
美と殺戮のすべて (2022)権力者の不正に声をあげ続けねばならぬ理由
全米で50万人以上が亡くなった「オピオイド危機」。その元凶とされるオピオイド系鎮痛薬オキシコンチンの製造会社パーデューを経営し、中毒性の高さを隠して大量販売した大富豪サックラー家。彼らの許されざる罪を糾弾する大物写真家ナン・ゴールディンの活動を記録しつつ、同時にその半生を紐解くことで彼女の「戦う理由」に焦点を当てたドキュメンタリーだ。まだ米社会が保守的だった’60年代に奔放すぎる姉がそれゆえ自殺へ追い込まれ、’80年代のエイズ禍における政府の無策で大勢の友人を失った彼女は、声を上げ続けなければ権力者にとって不都合な真実は簡単に葬り去られてしまうと危惧する。その気概は今の日本人にも絶対必要だ。
この短評にはネタバレを含んでいます