スリープ (2023):映画短評
スリープ (2023)ライター2人の平均評価: 3
結婚生活の危機を変化球的に描いたサイコロジカル・ホラー
ある日突然、夢遊病を発症して就寝中に奇行を繰り返す夫。生まれたばかりの赤ん坊に危害が及ぶことを心配する妻は、実母が連れてきた霊能者の忠告を真に受けてしまい、夫が邪悪な「なにか」に取り憑かれたのではないかと疑心暗鬼に陥っていく。一見したところ『エクソシスト』的なオカルト物だが、実のところ「結婚生活の危機」という普遍的なテーマを変化球的に描いた家庭ドラマと言えよう。些細なことから深まる夫婦間の溝、事態を悪化させる第三者の余計なお節介、すれ違いによって揺らいでいく信頼と肥大化していく妄想。「本当に心霊現象なのか?」を徹底して曖昧にすることで、人間同士の信頼関係の本質を浮き彫りにした脚本が巧い。
眠りは、自分で制御することが出来ない
人間の意識の不可思議さを浮かび上がらせる心理ホラー。まず、眠り。人間は、眠っている間の自分を制御できない。もうひとつは、悪霊。生じてしまうよくないことを、悪霊のせいだと考えることで納得がいくとしたら、その時、悪霊は存在するのか、しないのか。そんなモチーフに、不可解な現象に見舞われる夫婦2人、それぞれの性格の違いが掛け合わされて、人間心理の危うさ、予測不能さが、次々に暴かれていく。
監督・脚本のユ・ジェソンは、ポン・ジュノ監督『Okja/オクジャ』の助監督を経て、本作で監督デビューの新鋭。眠ることを恐れるようになる夫を『パラサイト 半地下の家族』の故イ・ソンギュンが演じている。