アンダー・ユア・ベッド (2023):映画短評
アンダー・ユア・ベッド (2023)ライター2人の平均評価: 3.5
日本版旧作よりも説得力のある韓国版
日本の映画監督が日本の小説を韓国で再映画化するという珍しいパターン。大学時代の片想いの女性と再会した気弱な主人公がストーカーと化したところ、彼女はエリートのモラハラ夫から激しいDVを受けていた。筋書きは日本版と殆んど一緒だが、しかしより物語に深みが増したように感じるのは、SABU監督の丹念な演出の賜物であろう。また、旧作は影が薄くて地味な主人公を演じる高良健吾が美形過ぎるという点に引っかかったが、一転して本作のイ・ジフン(同姓同名の元人気歌手とは別人)の適度な普通っぽさは役柄に大きな説得力を与えているように思う。なにより、どこからどう見ても韓国映画らしく仕上がっているのは興味深い。
SABUと韓国俳優のケミストリーを濃厚に堪能
基本の流れは高良健吾主演バージョンと同じ。冒頭いきなり激しいドメスティック・バイオレンスで背筋を凍らせ、その後も要所に目を覆う描写が仕掛けられるなど、今回は妄想や回想よりも現実で起こっていることのリアリティを重視した印象。そこはSABU監督“らしさ”というより、物語に躊躇なく挑んだ姿勢と受け取れる。むしろ時折挟まれるスタイリッシュな絵に“らしからぬ”新たなアプローチを感じたりも。
短い登場のキャストも含め俳優たちの個性が役に異常にマッチし、ゆえに演技も生々しく見える。
「名前を呼ばれたい」という切実さは日本映画版の方が上回っていた気もするが、そこに執着しないこの韓国版の方が違和感は少ないかも。