ボストン1947 (2023):映画短評
ボストン1947 (2023)ライター2人の平均評価: 4
『いだてん』ファンは必見
爽快かつ感動的なスポーツ映画でありながら、戦争や植民地支配が人々から何を奪ってしまうのかを考えさせられる作品。強者に踏みにじられていた人たちが、不屈の闘志で貧しさや差別を乗り越えて栄光を手にする過程に胸打たれる。説明過多にならず、前半の伏線をクライマックスのレースで回収していく作劇も見事だし、ランナー役のイム・シワンの肉体とアメリカでの大掛かりなロケーションが説得力を与えている。何よりムードが明るいのがいい。さすが『シュリ』のカン・ジェギュ監督。ソン・ギジョンとナム・スンニョンは大河ドラマ『いだてん』にもわずかながら登場していた。『いだてん』ファンは必見だろう。
踏みにじられ続けた民族の誇りを取り戻さんとする男たち
日本の植民地支配から朝鮮が解放されて2年後。かつてベルリン五輪のマラソン競技で金メダルを獲りながらも日本の手柄にされ、ささやかな抵抗を試みたせいで選手生命を奪われた悲劇の英雄ソン・ギジョンが、貧しくも才能ある若者ソ・ユンボクを朝鮮代表としてボストンマラソンへ送り出そうとする。1947年のボストンマラソンへ出場した朝鮮チームの実話。理不尽な日本の支配が終わったと思ったら、今度は居丈高な米軍統治が始まる。どこまでも尊厳を踏みにじられ続ける朝鮮民族。その誇りを取り戻さんと一致団結し、若い世代に希望を託さんとする大人たちの姿が胸アツだ。それだけに、この直後に朝鮮戦争が勃発するという歴史の事実が重い。