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雨の中の慾情 (2024):映画短評

雨の中の慾情 (2024)

2024年11月29日公開 132分

雨の中の慾情
(C) 2024 「雨の中の慾情」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

轟 夕起夫

つげ義春と片山慎三、「混ぜたら危険」を超えて快感に!

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

冒頭、導入部となる数十秒の映像と音の洪水が「走馬灯のような映画」であることを予告する。日常の経験、多彩な記憶をコラージュしてきた夢想の漫画家、つげ義春の世界を“踏み台”にし、奇想の監督・片山慎三が思いっきりハイジャンプしてみせたと評すべきか。

特異なつげ漫画に片山監督の豪胆なアプローチ、時間と空間の飛躍が導入され、ダイナミックな“うねり”が本作に息づいている。片山作品にトリッキーな展開は付き物だが、そうした映画的ギミックはキャリア上、彼ならば受け止められる。そう、それは売れない漫画家として、夢と現実とが混交する「つげ義春ユニバース」の住人に溶け込んだ主演、成田凌にもまた似合うものなのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

リピーター大量発生必至の逆算思考が効いた破格の夢想譚

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

片山慎三監督の台湾メインロケによる長編第3作は、つげ義春とのミスマッチ的な化学反応が起きて激シブの怪・傑作となった。同名の短編原作を序盤の発射台とし、『夏の思いで』『隣りの女』、最大のベースとなる『池袋百点会』を再構成しつつ、やがて壮大な世界領域へと拡張していく。

詳細は避けるが、物語には日中戦争が絡む。場所は中国河北省の魯家峪のようだ。ここは1941年~42年に日本軍からの攻撃を受けた村で慰安所もあった。「性と暴力の歴史」の表象としては伊藤大輔監督の時代劇『長恨』も引用される冒頭のモンタージュも印象的だ。作品構造は片山自身が参照作に挙げる『ジェイコブズ・ラダー』が最大のヒントになるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

プリズムの光に刺激され、2回観たらさらに深みにハマりそう…

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

つげ義春の原作は、あくまで入り口に過ぎない。冒頭パートで原作を鮮やかに映像化しつつ、その後は、つげを思わせる主人公の運命に迷宮的に耽溺させる作り。あちこちで疑問符が湧き上がり、ある時点でそこにひとつの回答が示され、映画的歓喜へとつながっていく。過剰な説明が常識となった映画の世界で、この装いは崇高な光を放ち、眩さに魂が吸い取られる感覚すら…。
過去作とまったく別ベクトルを目指す片山監督の野心。
漫画を描く欲求と性への欲望を容赦なく突き詰め、その先に見えてくる「人間」。
台湾ロケによる不可思議な郷愁への誘(いざな)い。
そして成田凌。その肉体が提示する儚さ、危うさが異様なレベルで役とシンクロする。

この短評にはネタバレを含んでいます
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