HOW TO HAVE SEX (2023):映画短評
HOW TO HAVE SEX (2023)ライター2人の平均評価: 3.5
Z世代の揺れ動く青春を活写したサマーリゾート・ムービー
イビザやマガルフと並んで若者に大人気の南欧リゾート地マリア。夏休みにイギリスからやって来た16歳の親友少女3人組は、煩わしい日常を忘れるためパーティと海水浴とアルコールとクラビングで連日連夜ハメを外し、ついでにセックスもしまくって短い夏を謳歌しようとする。さながら英国版『スプリング・ブレイカーズ』といった印象だが、しかしこちらの少女たちはごくごく平凡な小市民。背伸びをして大人ぶってはいるものの、その素顔は将来に漠然とした不安を抱える普通の女の子たちだ。そんな彼女らの夢や希望や痛みや恐れを、慈愛に満ちた眼差しと尖がったカメラワークで鮮やかに浮かび上がらせるM・M・ウォーカー監督の演出が新鮮。
この時期ならではの微妙な心の動きを映し出す
高校の卒業旅行中のヒロインの気持ちが、ごく微妙な動きまで、セリフではなく、彼女の行動と鮮やかな映像によって、生き生きと映し出される。仲良し女子3人で卒業旅行に出かけたギリシャのクレタ島。圧倒的な開放感、一晩中踊っていられる体力、"HOW TO HAVE SEX"という課題による無意識のプレッシャー、自信のなさ、誤った判断、友人間の微妙な力関係。この時期の普遍的な感情が、どこまでも鮮明で生々しい。
監督・脚本は、本作が初の長編監督作となる、ロンドン生まれのモリー・マニング・ウォーカー。多数のミュージック・ビデオや映画『SCRAPPER/スクラッパー』等の撮影監督でもあり、本作の映像も鮮烈。