まる (2024):映画短評
まる (2024)ライター2人の平均評価: 3.5
さまざまな"まる"の「形」が説得力を持つ
"何かを創作する"とは、どのような行為のことなのか。それを、現在のアート界へのチクリとしたコメントも混えて問いかける。主人公は美大卒で、有名アーティストのアシスタントをクビになった男。彼がふと描いた”まる"が評価され、騒動が起きる。
主人公の気持ちの変化につれて、彼の部屋の様相が変貌するなど、主人公の意識が映画の画面に色と形となって現れるという演出が、絵画をモチーフにした物語に合致。画面に現れるさまざまな"まる"が、形として、目に説得力を持って迫ってくる。
監督・脚本は『かもめ食堂』『川っぺりムコリッタ』などの荻上直子。全編に漂う、ぼんやりとしたユーモラスな気配も魅力的。
適材適所
堂本剛を念頭にしたいわゆる”当て書き”で創られたアートに関する映画。意図せず大きなムーブメントを起こしてしまい、やがてそれに飲み込まれていく男を堂本剛が好演しています。豪華な共演陣が並びますが、特に個性的な売れない漫画家(志望)の隣人を演じた綾野剛が良かったです。堂本剛との相性の良さもあったのでしょうが二人のシーンはどのシーンも見ていて楽しかったです。映画前半の世界の人々が”まる”に夢中になっていく流れはいわゆるバズリの描写として興味深く見ました。荻上監督、ここへ来て新境地と言った感があります。