満月、世界(みつき、せかい) (2024):映画短評
満月、世界(みつき、せかい) (2024)大人でもない子供でもない少女たちの「今」を鮮やかに捉えた小品
中学生の子供たちが大人になるまでの10年間を、実際に10年かけて撮影するというリンクレイターの『6才のボクが、大人になるまで。』のような、目下制作進行中だという塚田万理奈監督の企画『刻』から派生したスピンオフ的な作品。いわば、まだ大人ではないが子供でもない多感な年齢の少女たちの、自らの将来への希望や不安、思春期ならではの感情の揺れ動きを繊細なタッチでカメラに捉えたオムニバス映画だ。明確なストーリーは存在せず、演じる少女たちの実像を投影した「今この瞬間」が瑞々しく綴られる。その取り留めのなさが、むしろまだ何者でもない子供たちの迷いをリアルに象徴すると言えよう。信州の長閑な景色もまた美しい。
この短評にはネタバレを含んでいます