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不思議の国のシドニ (2023):映画短評

不思議の国のシドニ (2023)

2024年12月13日公開 96分

不思議の国のシドニ
(C) 2023 10:15! PRODUCTIONS / LUPA FILM / BOX PRODUCTIONS / FILM-IN-EVOLUTION / FOURIER FILMS / MIKINO / LES FILMS DU CAMELIA
相馬 学

喪失感が異国で埋まる、豊饒なラブストーリー

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 邦題や予告編から京阪神版『ロスト・イン・トランスレーション』を想像したが、本作が描くのは国境を越えてロストしたものではなく、ロストを埋めるものだ。

 喪失感や虚無感を浮き彫りにした人間ドラマは、愛する者の幽霊を出現させることにより重いものとはならず、軽妙な味わいを醸し出す。ユーモアの範囲に収められたカルチャーギャップの描写も効果的。

 セリフより映像で語っている点も魅力だが、とりわけ京都の観光名所の静謐さはキャラクターたちの心象に寄り添うかのようで目を奪われる。『雨月物語』にオマージュを捧げつつ、ラブストーリーを構築するE・ジラール監督の手腕にも唸った。そう、本作は愛の物語でもある。

この短評にはネタバレを含んでいます
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