オークション ~盗まれたエゴン・シーレ (2023):映画短評
オークション ~盗まれたエゴン・シーレ (2023)芸術と金融、価値の衝突の中で
カイエ批評家出身にして名脚本家、パスカル・ボニゼール監督の快作。彼は『これが私の人生』のソフィー・フィリエール監督(23年逝去)のパートナーだった人。奇しくも12月のカンヌ監督週間特集において実子2人が来日した後の日本公開となる。
『ある画家の数奇な運命』は1937年のナチスによる退廃芸術展から始まるが、その延長で行方不明となっていたエゴン・シーレの「ひまわり」の内の一作を巡る騒動。絵画オークションという題材は珍しくないが、曲者だらけの人間模様を織り成す特異にして軽妙かつ良質のミステリー調に仕上げた。社会階層の交差を描く中、キーパーソンとなる青年マルタンの清涼感が抜群の余韻をもたしてくれる。
この短評にはネタバレを含んでいます