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メイデン (2022):映画短評

メイデン (2022)

2025年4月19日公開 117分

メイデン
(C) 2022 FF Films and Medium Density Fibreboard Films.

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.5

なかざわひでゆき

思春期の孤独や痛みを浮き彫りにする素朴で端正な青春映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 緑豊かな大自然に囲まれた、しかしそれ以外には何もないカナダの片田舎。無二の親友であるスケボー少年コンビが思いがけない悲劇に見舞われ、ひとりの少女が忽然と姿を消してしまう。どこにでもある田舎町の平和で平凡で退屈な日常に起きた2つの事件が浮き彫りにするのは、世界の片隅で自分の居場所を見つけられずにいる、多感な年頃の少年少女が抱えた孤独や痛みや哀しみ。彼らのような子供は、恐らくいつの時代も世界中に存在するはずだ。どこか寓話的で神秘的なストーリーとディテール描写にこだわった映像美が秀逸。『スタンド・バイ・ミー』の頃のリバー・フェニックスを彷彿とさせる新人ジャクソン・スルイターにも要注目だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

思春期の少年たちの夢想と記憶が混じり合う

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 映画は、すぐ近くに野原や川がある場所で暮らす10代の少年少女を映し出すが、本人にもその正体が分からない、捉えどころのない鬱屈のような痛みのようなもののせいで、死が、彼らのごく近いところにある。死に容易に呼び寄せられるし、生でも死でもない領域に無意識に足を踏み入れてしまう。画面に写しだされるものが、記憶なのか、これから起きることなのか、判別できない。

 真昼の野原のビニールがはためく建築中の家。暮れていく夕方の空。腰まである草の野原。夜の森の虫の声。タイトルは、ある少年が鉄橋や壁にスプレーで何度も描く文字だが、本人にとってその語に意味はなく、ただ描きたいという気持ちが形になっている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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