津川雅彦さん、マレーシアで殺気立った役作り 行定勲監督、永瀬正敏ら偲ぶ
第31回東京国際映画祭
今年8月4日に心不全のため亡くなった故・津川雅彦さんが参加したオムニバス映画『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』公開初日舞台あいさつが12日、新宿ピカデリーで行われ、キャストの永瀬正敏、加藤雅也、シャリファ・アマニ、行定勲監督が登壇。作品の一篇「鳩 Pigeon」で主演を務めた津川さんへの思いを語った。
本作は、東京国際映画祭と国際交流基金アジアセンターが、共同プロジェクトとして制作したオムニバス映画。「鳩 Pigeon」を行定が、「SHINIUMA Dead Horse」をフィリピンのブリランテ・メンドーサが、「Beyond The Bridge」をカンボジアのソト・クォーリーカーが監督を務めた。
津川さんが主演した「鳩 Pigeon」でメガホンをとった行定監督は、2016年、撮影地となったマレーシアに津川さんが入ってきたときから「かなり痩せていたと」と当時を振り返る。コミュニケーションがとれない老人役ということで、現場に入ったときから津川さん自身、非常に殺気立っており、行定監督をはじめ共演したアマニやマレーシアの撮影スタッフを誰も寄せ付けないほどピリピリしていたという。
実際、アマニは「話すことも怖くてできなかった」と切り出し、「どうしていいかわからず、怒りの涙を流すほどだった」と打ち明ける。それでも最後のシーンの撮影が終わると、津川さん自らアマニに歩み寄り、初めて言葉を交わし抱きしめてくれたとか。津川さんと東京国際映画祭で再会したときには、陽気に話しかけてくれたそうで、手を繋ぎながらレッドカーペットを歩いたことは、アマニにとって忘れられない思い出に。「わたしの心にはいつまでもおじいちゃんが住んでいます」と故人を偲んでいた。
また、本作で津川さんと共演した永瀬も、現場での津川さんの鬼気迫る役への入り方に「コミュニケーションがとりづらかった」と正直に語ると、以前から津川さんのポートレートを撮りたいと思っていたが、そのチャンスがなかなかなかったと残念がる。撮影が終わり、津川さんにあいさつをしたときには、唯一柔和な笑顔を見せてくれたというが、運悪くカメラを持参しておらず「自分の馬鹿」と大きな後悔があったことを明かした。
行定監督によると、津川さんが今日の舞台あいさつ出演も以前から快諾してくれていたと言い「こうして公開初日に、この場にいらっしゃらないことが非常に残念ですが、名優と一緒に仕事ができたことに感謝しています」と感慨深げな表情で語っていた。(磯部正和)
『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』は10月12日~18日、新宿ピカデリー、大阪なんばパークスシネマ、名古屋ミッドランドスクエアシネマにて公開