『IT/イット THE END』ラスト30分に自信 監督が込めた原作のスピリット
作家スティーヴン・キングの代表作を実写化した大ヒット映画の続編『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』のアンディ・ムスキエティ監督と、姉でプロデューサーのバルバラ・ムスキエティが、最終章となる本作について語った。
映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』日本オリジナル本予告
1989年にアメリカの田舎町で発生した児童連続失踪事件の影に潜む、ピエロ姿の怪異ペニーワイズ。前作『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』では、トラウマを刺激する恐怖描写と共に、ペニーワイズに立ち向かう少年少女たち、“ルーザーズ・クラブ”が織りなす人間ドラマも丹念に描かれ、大ヒットを記録した。
『IT/イット THE END』では、前作から27年後を舞台に、大人になったルーザーズ・クラブの面々が、再び連続失踪事件が発生した故郷へと舞い戻る。大長編の小説が原作ということもあり、ムスキエティ監督は当初から、二部作を想定していたという。「スタジオがそのつもりだったかはわからない(笑)。多分、1作目が成功したから実現したんだとは思うけど、映画監督としては、対になる2本の映画にするつもりだったよ」
最終章となる続編には、子供時代のルーザーズ・クラブもフラッシュバックで登場。原作小説を思わせる構成となり、ムスキエティ監督は「原作における、2つのタイムライン(時代)間の会話は本当に魅力的だ。でも1作目は、子供たちだけのストーリーに留めたかった。だから2作目は1989年にフラッシュバックする。しかも、ただ『僕は覚えてる……』といった使い方ではなく、ストーリーの一部として、メインプロットにしっかり融合した形でね」と明かす。
原作ファンが気になる要素といえば、物語の終わり方だろう。キングの小説は1990年にも前後編で映像化されており、ペニーワイズを演じたティム・カリーの不気味なビジュアルと熱演が根強い支持を集める一方、そのエンディングには否定的な声も多い。しかしムスキエティ監督は、『IT/イット』を終わらせることに「困難はなかった」と語る。
「僕にとって、原作のスピリットに忠実でいることがひとつの指針だったんだ。だから、エンディングだってどうするべきかわかっていた。むしろ、このストーリーをどうやって構成して映画にするかを考えることの方が、よっぽど挑戦だったよ」。またバルバラも「アンディと私にとって極めて重要だったのは、原作のエンディングに込められたエモーショナルな側面を保つことでした。そして、それは完璧に反映できたと思います。もちろん、いくつか変更した要素はあるけど、映画のラスト30分にはあらゆる感情が込められていて、第1章と同じような高揚感と共に劇場を後にできるはずです」と自信をのぞかせた。
1986年の原作発表から、現在も人々を魅力する『IT/イット』の物語。ムスキエティ監督は「ホラーでありながら、もっと現実的で奥深いことを語っているんだ。人間関係や、子供時代の思い出といった、誰もがつながりを見出せるストーリーをね。これは大人時代ではなく、子供時代へのラブレターであり、子供でいることの素晴しさについて語っているんだよ」とその魅力を語る。「同時に、現代に通じる物語でもあります」というバルバラは「それは“恐怖”について、多くのことを語っているんです。いま世界は、アメリカに限らず、恐ろしい場所へと進んでいます。もし恐怖を根本的に打ち砕かなければ、“イット”が彼らを殺すことになる。この映画は、恐怖に取り込まれると何が起きるのかを描いているんです。願わくば、この映画がそうした状況を戻す一因になるといいですね」(編集部・入倉功一)