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サードシーズン2009年10月

私的映画宣言

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私的映画宣言 サード・シーズン10月

筆者の近況報告

山縣みどり

大好きなジョン・キューザックが『2012』で来日予定。でも、インタビュー依頼はゼロで悲しい……。キューちゃんに魅力がないんじゃなく、不況とわたしの筆力不足が悪いんですぅ。
●私的おススメの10月公開作は、『パイレーツ・ロック』(10月24日公開)。ロック、いや音楽ラバーの魂の響きに酔いしれて!

小林真里

ビバリーヒルズにあるクライヴ・バーカーの豪邸に赴きインタビューを敢行。神々しい強烈なオーラを放っており卒倒しそうになった。アメイジングな体験でした。ナイン・インチ・ネイルズのラスト・ツアーで見たトレントの雄姿もまぶしかった。
●私的おススメの10月公開作は、『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』(10月24日公開)。

斉藤博昭

最近の取材で印象深かったのは、『ファイティング・シェフ~美食オリンピックへの道~』にも登場した長谷川幸太郎シェフ。裏話も面白かった上、(宣伝するわけじゃないが)取材場所だった彼のレストランの皇居を望む絶景にうなった!
●私的おススメの10月公開作は、『パイレーツ・ロック』(10月24日公開)。

前田かおり

食欲の秋、『ファイティング・シェフ~美食オリンピックへの道~』を観て、がぜん料理に燃える。『風が強く吹いている』で走る気満々に。ってな具合で、観た映画に感化されまくる今日このごろ。
●私的おススメの10月公開作は、『ピリペンコさんの手づくり潜水艦』(10月公開)。人のいいおじさんが30年間、せっせと潜水艦づくり、ほのぼのしています。

今祥枝

過去は振り返らない主義だが(笑)、『アニエスの浜辺』を観てヌーベルバーグとその周辺に費やした高校時代の感覚が否応なしによみがえった。しばしノスタルジーに駆られつつ、自分も年を取るわけだよなあと苦笑。
●私的おススメの10月公開作は、『アニエスの浜辺』(10月10日公開)。

私の中のあなた


(C) MMIX New Line Productions,Inc.All Rights Reserved.

アメリカの人気作家ジョディ・ピコーのベストセラー小説を、『きみに読む物語』のニック・カサヴェテス監督が映画化。白血病の姉のドナーとなるべく遺伝子操作によって生まれた妹が、姉への臓器提供を拒んで両親を提訴する姿を通し、家族のありかたや命の尊厳を問いかける。主演のキャメロン・ディアスが初の母親役に挑み、両親を訴える次女役を『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリンが熱演。シリアスなテーマながら、主人公一家の強い家族愛が胸を打つ。

[出演] キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、アレック・ボールドウィン
[監督・脚本] ニック・カサヴェテス

山縣みどり

4点難病の愛児を救うためにドナー要員を妊娠・出産することの是非、死ぬ権利、母親が子どもに注ぐ愛情のプライオリティーなどなど重大な問題を投げ掛ける映画なのだが……。いかんせん、共感を抱きにくいというか、絵空事にしか思えないのが難点。『きみに読む物語』で味をしめた監督が泣かせに走った雰囲気もあって、観ていて白けてしまうのだ。フラッシュバックを使ってドラマを盛り上げる手法も「なんだかな?」という感じ。個人差があると思うが、わたしは早い段階でネタがわかったので、物語への興味を一気に失ってしまった。

小林真里

5点キャメロン・ディアスの母親役はなかなかハマっているし、久々に見た父親役のジェイソン・パトリックの存在感も光っていたが、結局いつものアビゲイル・ブレスリン出演作のように、“アビゲイルの映画”になっていたように感じたのは僕だけでしょうか? 多少のひねりはあるとはいえ、観客を泣かせることだけを目的として作られたあざとい、全然リアルじゃない難病ものの感動作、という感は否めず、ちょっとげんなりしてしまった。

斉藤博昭

7点妹は、なぜそこまでして愛する姉への臓器提供を拒否するのか。その不可解な思いも、アビゲイル・ブレスリンが揺るぎなき自信の演技で見せ、納得させられる。やっぱ、この子は天才だ。難病の姉、つらい過去を持つ判事ら、周囲のキャストが観客の心をつかむ分、坊主頭にまでなって熱演しているのに、どんどん周りから浮いていくキャメロン・ディアス。難しい役どころとはいえ、ちょい痛々しい。作品全体としては、家族や生死の問題を新たな方向から考えさせる点に好感。

前田かおり

7点一つ間違えば、ベタベタなお涙チョーダイ話になりそうだが、微妙なサジ加減で寸止め。じんわりと心に響く家族の群像劇に仕上げたところはニック・カサヴェテス監督のうまさだ。キャスティングもいい。注目は長女役のソフィア・ヴァジリーヴァ。ドラマ「ミディアム」で彼女の小さいころから見ていたので、その成長にも驚き。長男役は「CSI:マイアミ」のホレイショ・ケインの息子。ほか、チラリと「BONES」のエミリー・デシャネルも登場。で、本作のカメラは彼女の実父キャレブ・デシャネル。海外ドラマ好きのツボにもハマるのであった。

今祥枝

8点個人的に身近な題材であるため、鑑賞するのがつらかった。もとより難病を扱った作品は安っぽいお涙ちょうだいになりがちなので、よほどのことがない限り観たくないと思っている。だが、本作にそうした杞憂(きゆう)は必要なかったようだ。確かに医療現場の描写やいくつかの設定には大いに疑問が残るが、とても大切なメッセージを自分なりに受け取ることができた。そして改めて、「人間はいつか死ぬ」という自明の理を受け入れて生きていかなければならないことの過酷さを思った。

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さまよう刃


(C) 2009『さまよう刃』製作委員会

『秘密』『容疑者Xの献身』などの原作者でもある人気作家、東野圭吾のベストセラー小説を映画化した犯罪ドラマ。唯一の家族、一人娘を殺された父親が犯人の少年への復讐(ふくしゅう)を図る姿を通して、法と正義、命の意味を問いかける。『半落ち』の名優、寺尾聰が娘の死に苦悶(くもん)する父親を熱演。竹野内豊や伊東四朗が、主人公を追跡する警官を演じる。監督は『むずかしい恋』の益子昌一。社会的なテーマと登場人物が丁寧に描かれ、見応えがありながらも深く考えさせられる。

[出演] 寺尾聰、竹野内豊、伊東四朗
[監督・脚本] 益子昌一

山縣みどり

6点15歳の少女を陵辱、殺害したチンピラと復讐(ふくしゅう)を誓う被害者の父親、正義に悩む刑事の心模様を軸に日本人らしいモラルが描かれる。少年法に守られて悪化する未成年犯罪者に関しては個人的に怒りを覚えることが多く、江戸時代のあだ討ち制度を復活させろと思っているくちだ。そのせいか、人々を守る側にいながら正義の鉄ついを下せない、竹野内豊が演じた刑事やペンションの親父さんの心情に大いに共感してしまった。その一方で寺尾聰演じる父親の心情は理解し難い。とはいえ、『96時間』のパパみたいに突っ走れないのがリアルってことなのでしょうね。

小林真里

5点映画全体の一貫とした緊迫感と静謐(せいひつ)でシリアスなトーンは見事である。ただ、日本の法律(少年法)に対する疑問を投げかけた、父親の復讐(ふくしゅう)劇というテーマはさして新しく感じられないし、サスペンスとしてのひねりも特にない。なので、ヘビーではあるが、衝撃という衝撃は特に感じられず。しかも、脚本の詰めが甘く、突っ込みどころが多いのが残念(具体的にどういう部分が、ということはネタバレになるのであえて書かないが)。

斉藤博昭

6点娘を殺された父による執念の復讐(ふくしゅう)に、正義と法の間で悩む刑事、少年法の是非と、多くの刃のような鋭利な要素があるが、語り口は、あくまでも淡々。そこが物足りなくもあるし、逆に落ち着いたムードで観やすくもある。この映画での最も鋭い刃は、寺尾聰の演技かもしれない。もともと熱演型ではない彼が、いくつかのシーンで、物理的にも相当ハードと思われる挑戦をしながら、人間の極限の行動を表現するのには驚かされた。それだけに、ほかのキャストのインパクトが……。

前田かおり

4点復讐(ふくしゅう)に燃える父・寺尾聰はさすがの存在感だし、渋面で老練の刑事を演じる伊東四朗も達者で安心して観ていられると思いきや、ツッコミどころ満載。とにかく警察がドン臭い。ネタバレになるので書きませんが、ずさん過ぎる。法の壁に無力を感じ、寺尾に必要以上に同情する刑事・竹野内豊のキャラクターにも説得力を持たせてほしかった気も。ましてや、父親が泊まったペンションの親子とのエピソードはすごく乱暴。いきなり銃を渡すシーンは、いろんな意味で問題ありだと思う。

今祥枝

6点東野圭吾の原作は大きく変更されている部分もあり、これには是非があるだろうが、映画は原作の世界観をまじめに丁寧に描こうとしている。寺尾聰が演じる父親の声にならない悲痛な思いは痛いほど伝わってくるし、ほかの共演者&スタッフが襟を正して作品に真摯(しんし)に取り組んでいるのはわかる。しかし登場人物それぞれの心情はわかりにくく、特に竹野内豊と伊藤四朗の刑事が最後まで生きてこないのは残念な限り。ペンションのエピソードも消化不良だ。

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脳内ニューヨーク


(C) 2008 KIMMEL DISTRIBUTION LLC.

『マルコヴィッチの穴』『エターナル・サンシャイン』の脚本家、チャーリー・カウフマンが監督デビューを果たすエンターテインメント・ムービー。人生に行き詰った人気劇作家が、自分の人生を再生するため、壮大な芸術プロジェクトの構想を思いつく。主人公をオスカー俳優フィリップ・シーモア・ホフマンが好演する。無限の想像力をかき立てられる予測不能な脚本や、斬新な映像などチャーリー監督の非凡なセンスと独創性に着目だ。

[出演] フィリップ・シーモア・ホフマン、サマンサ・モートン、ミシェル・ウィリアムズ
[監督・製作・脚本] チャーリー・カウフマン

山縣みどり

2点悩めるアーティストの自分探しって本当に退屈。ユニークで驚きに満ちた(ギミックが多すぎるのが難点?)な脚本で映画ファンに多くの喜びを与えてくれたチャーリー・カウフマンの作品だけに期待値が高すぎたのかもしれないが、自虐的でありながらその実ナルシスチックな主人公に最高にうんざり。堂々巡りの人生17年は見方によっては偉大だけれど、リアリストのわたしには現実逃避にしか感じられない。自己評価が高すぎる人間への警鐘かと裏読みしてみたけど、観客に優しさを求める映画ってわたしは観なくていいと思う。

小林真里

5点チャーリー・カウフマンのトリッキーなアイデアは、いつも確かに独創的で面白い。が、過去に彼が脚本を手掛けてきた作品は、とっぴなワンアイデアだけで、ちゃんと物語として着地できていない中途半端な魅力のものばかりだと思う(ただし『エターナル・サンシャイン』を除く)。そんなわけでこの初監督作は多少懸念していたのだが、案の定、虚構の世界で迷子になってしまうような感覚を覚える。しかも混沌(こんとん)としたシリアスで暗い物語だったので、「ああ、またか……」と困惑せざるを得なかった。

斉藤博昭

4点チャーリー・カウフマンらしい、ヒネリにヒネった構想へのチャレンジ精神は評価したいけど、いかんせん、ストーリーが盛り上がりに欠ける。結局、どこまでが脳内の出来事だったのか? それさえも気付かず、映画に置いてけぼりにされた自分がいた。もう少し、遊び感覚や軽さがあれば、同じくアーティストが人生をショーアップして再構築した『オール・ザット・ジャズ』に並んだのに。わかりやすい映画が急増する中、逆の意味で一服の清涼剤ではあります。

前田かおり

6点ほぼフィリップ・シーモア・ホフマンの一人舞台。お相手はサマンサ・モートンはじめ、オスカー常連女優たちでとってもぜいたくだ。だが、『マルコヴィッチの穴』や『エターナル・サンシャイン』と同じく、今回も現実か妄想かと惑わせるカウフマン・ワールドで、話も追いづらい。主人公のドツボった人生をやり直したいという気持ちには、筆者自身、人生挫折しっぱなしなので共感。が、映画は救われず、どんどんわびしくなる展開。人恋しさが募る晩秋に観たら、余計にわびしくなるかもー。

今祥枝

6点最初から最後まで暗く憂うつな作品で気がめいった。人生とはかくもつらいものなのだ。それは年齢と共に、誰もがわかっていることで、それでも何とか前向きに生きて行こうと日々頑張っている。そう思っていたor思いたいのだが、チャーリー・カウフマンは自らの憂うつをこれでもかと見せつける。途中で何度か思考が停止しかけたのは、一部の人々がありがたがっているらしい“奇抜なアイデア”などのせいではなく、カウフマンの憂うつに付き合う気になれなかったからである。

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筆者プロフィール

今 祥枝斉藤 博昭前田 かおり
中山 治美鴇田 崇相馬 学
高山 亜紀小林 真里山縣 みどり
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