サードシーズン2010年10月
私的映画宣言
ウィル・フェレルとマーク・ウォールバーグの刑事コンビに笑いが止まらない『ジ・アザー・ガイズ/The Other Guys』(原題)が劇場公開未定の運命に。『ゾンビランド』みたいに時間がかかってもいいから、ぜひちゃんと公開してくれ! DVD スルーを一人で観て笑うのは寂しいよ!
10月のオススメ映画は、『怪盗グルーの月泥棒 3D』(10月29日公開)。
奇抜な企画の和製ホラー映画の撮影現場を取材。テイクを重ねてもテンションが落ちない役者の方々の、迫真の演技に度肝を抜かれる。単なる企画モノと侮れない、オリジナル以上の怖さに期待が高まった。
10月のオススメ映画は、男汁充満の『エクスペンダブルズ』(10月16日公開)。
エミー賞授賞式に参加させてもらい、レッドカーペットなどをしっかりチェック。ロビーでは「Glee」のケヴィン・マクヘイル&ハリー・シャム・Jrとおしゃべりできたし、「BONES ボーンズ -骨は語る-」のエミリー・デシャネルにぶつかり骨太さを実感。色々な意味で実になった取材でした。
10月のオススメ映画は、『プチ・ニコラ』(10月9日公開)を観ると、子どもが欲しくなるかも。10月は『冬の小鳥』『リトル・ランボーズ』と子役心を巧みに切り取った秀作が続々!
DVD特集原稿執筆のため、「24 TWENTY FOUR」や「三国志」、「龍馬伝」など戦う男にオヤジ系のドラマばかりをイッキ見。嫌いじゃないけど、おかげでいつも握り拳状態で全身に力が入りまくり、肩凝りがピーク! あ、首も回んない。
10月のオススメ映画は、『怪盗グルーの月泥棒 3D』(10月29日公開)。
シネコンで初めて3D映画を体験したけれど、1.レンズが汚い場合がある上に、2.不具合があってから本編が始まるまでの時間が短いなど、インフラ的な課題が多いぞ。個人的には臨場感より画面が暗くなることが問題だし。
10月のオススメ映画は、『エクスペンダブルズ』(10月16日公開)。
ガフールの伝説
フクロウの世界を舞台に、世界征服をたくらむ組織から王国を救おうとする若きフクロウたちの戦いを壮大なスケールで描いた冒険ファンタジー・アニメ。多くのファンに愛されているキャスリン・ラスキーのファンタジー小説「ガフールの勇者たち」を、アニメ初挑戦となる『300 <スリーハンドレッド>』のザック・スナイダー監督が映画化。声の出演には、『ラスベガスをぶっつぶせ』のジム・スタージェス、『ブライト・スター~いちばん美しい恋の詩(うた)~』のアビー・コーニッシュらが名を連ねる。
[声の出演] ジム・スタージェス、ライアン・クワンテン
[監督] ザック・スナイダー
ほぼ本物が演じた『ハリポタ』のヘドウィグも真っ青な「リアル」フクロウの映像は、もはやアニメの域を超えている。ヘビやコウモリもいい意味で生々しくて、ネイチャードキュメンタリーを観ている錯覚に陥った。そして3D効果によって、あの『WATARIDORI』と同様に、こちらも一緒に飛んでいる気分に……。そして過剰なまでのバトルやフクロウ戦士たちの装備が、空中版『300 <スリーハンドレッド>』ってのもザック・スナイダー監督らしい。あらゆる点で想定外の映像体験!
ザック・スナイダー監督の3D映画なので、エッジの効きに期待がかかりそうだが、「ファミリー映画を撮りたかった」という監督の発言を踏まえた上で観るべきだろう。半人前のキャラクターが過酷な経験を経て、たくましく成長するドラマはこれまで何度となく描かれてきたことで、目新しさはないが、それでも気持ちが引き寄せられるのは3D効果のなせる業。吹雪の中の飛翔シーンの幻想美は鮮烈で、要所で使用されるスナイダーらしいスローモーションも効果的。ストーリー展開の慌ただしさが惜しい。
フクロウにはみじんも興味がなく、キャラの怖い絵柄も好きではないが、物語自体が秀逸なので最後まで飽きずに見入った。「純血種」と名乗り、フクロウ世界征服を企てるメタルビークは、『300 <スリーハンドレッド>』のクセルクセスや『ウォッチメン』のオジマンディアスに相通じ、そこがザック・スナイダー監督の創造性をかき立てたのだろう。ドッグファイトをほうふつさせるフクロウ空中戦やドラマチックな音楽が効果的な炎の中の兄弟決戦、妹フクロウの瀕死(ひんし)の白目など子どもが観たらトラウマになりそうな残酷シーンも多く、児童書原作だからと妥協しない監督の姿勢に敬服。
正直、フクロウの物語ってどーなの? 大体、顔の違いがわかるのかぁ? とタカをくくっていたが、あれこれ出てきても判別可能。冒険譚(たん)はベタだが、フクロウの生態も織り交ぜて描かれ、「ダーウィンが来た!」を見ているような勉強気分にもなり、お子様には良さそう。すんごい迫力の飛行シーンには大人だってハマりそう。幻想的な背景と独特や色使い、ザック・スナイダー監督らしいサイケなムードも意外にフクロウ・ワールドとマッチしてます。
やけにリアルなフクロウがウジャウジャ出てくるだけの映画だろうと、正直、ナメてかかって鑑賞したことをザック・スナイダー監督に謝りたい。まさかフクロウで『300 <スリーハンドレッド>』的なアクション映像が拝めるとは思いもしなかったし、真の勇者とは? の答えもイイ! 個人的には兄弟フクロウの関係と運命から目が離せず、クライマックスなどアナキンvs.オビ=ワン! 「砂のう」を使えとか、『スター・ウォーズ』チックなんだよな~。
シングルマン
ファッションデザイナーとして成功を収めたトム・フォードが、かねてより熱望していた映画監督として初メガホンを取った人間ドラマ。「ベルリン物語」などの著者クリストファー・イシャーウッドの小説を基に、亡き愛する者のもとへ旅立とうとする中年男性の最期の一日を感動的に描く。主人公の大学教授を演じるのは『マンマ・ミーア!』のコリン・ファース。彼のかつての恋人を、『ブラインドネス』のジュリアン・ムーアが演じる。絶望の底で孤独に苦しむ主人公が見つける、何げない幸福が胸に迫る。
[出演] コリン・ファース、ジュリアン・ムーア
[監督・脚本・製作] トム・フォード
独特のネチッこさと、ナルシシスティックなデカダンス(退廃の香り)、端正かつ超キッチュな映像美という英国式ゲイムービーの伝統(?)に、ファッションデザイナーとしての監督の才能がマッチ。初の長編作品とは思えない隙(すき)のない仕上がりは、主人公にトム・フォードの思いがストレートに投影されたからだろうね。人生の新たな支えになりそうな教え子の美形青年を、魅力的な女子大生に変換すれば、セクシュアリティーを超えた普遍的中年クライシスの物語にもなる。その辺りがお見事。
1960年代のロサンゼルスを舞台にしながらも、そう見えないのは、撮り方がヌーベルバーグ期のフランス映画を思わせるから。そういう意味ではとても興味深く観たのだが、いかんせん描かれるドラマに共感できないのがツラい。インテリのもんもんとした姿を延々と見せられることからしてエンタメ性を放棄しているのは明らか。あとは観る側に何かを積極的に受け取る姿勢があるかどうかだろう。欧米では高く評価されたが、インテリではない自分には苦痛でありました……。
恋人の死で人生の意義を見失ったゲイの大学教授の1日を追うラブストーリーで、ぎっしり詰まったトム・フォードの美学が見どころ。死を決意した朝にきちんとスーツを着込み、授業で偏見の恐ろしさを説き、街頭で男娼(しょう)にナンパされ、親友にひそかに別れを告げ、その合間に恋人の思い出を反すうする。恐ろしい行為を控えている教授の視線がとらえる一瞬一瞬が刹那(せつな)的に美しい。舞台美術や衣装にはペドロ・アルモドバルやウォン・カーウァイの影響が濃いが、フォード流に昇華している。そして最高に素晴らしいのは、コリン・ファースの演技だ。抑制した表情変化で内面の苦悩を演じ切った技量は、ほかの追随を許さない。
審美眼が半端なく厳しいであろうトム・フォードの初監督作。ファッション、インテリアには一分のすきもなく、主役を演じるコリン・ファースも肉付きも程よくってステキっ! ゲイ男性の物語でゲイ目線な作だが、愛するパートナーを亡くした彼の嘆きと絶望、孤独は痛切に響く。しかも、死を決意した彼の完ぺき過ぎる身辺整理にはお一人さまライフの人間には見習いたくなる部分も。ただ、準備が良過ぎても人生何が起こるかわかんない。人の世って皮肉ではかなくて……と、あれこれと考えさせられました。
去年の東京国際映画祭でキャッキャ騒がれていたことを思い出したが、処女作はビギナーズラックに恵まれることが少なくなく、ファッションデザイナー出身のトム・フォードによる初監督作もまさしくソレ。監督自身のウソ偽りのない告白を、非凡な映像センスでオシャレにまとめる。超パーソナルな映画ながら、伝えたいこととそのための技術がそろった秀作。しかし、そもそも主人公の苦悩がよくわからないという自分と相談してこの点数。
ナイト&デイ
いい男との出会いを夢見る平凡な女性がミステリアスな男と偶然の出会いを果たすも、その男がスパイだったために大騒動に巻き込まれるというラブストーリーをベースにしたアクション。『バニラ・スカイ』で共演したトム・クルーズとキャメロン・ディアスが再び顔を合わせ、命懸けのアドベンチャーに挑むハメになる男女をコミカルに演じる。監督は、『ニューヨークの恋人』のジェームズ・マンゴールド。アイルランドやスペインなどを舞台に繰り広げられる大迫力のアクションが見ものだ。
[出演] トム・クルーズ、キャメロン・ディアス
[監督] ジェームズ・マンゴールド
文句なく面白い。あらゆるシチュエーションでのアクションがド迫力だし、主演二人のオーラはまだまだ健在。ただ、すべてが合格点で、ぶっとんだ驚きがないのも事実だ。これもスター映画の宿命? どんだけ無敵アクションを披露しても、イーサン・ハントのパロディーに見えてしまうトム・クルーズ。「目をつぶったまま着替えさせる」なんてテクも、セリフじゃなく実際に見せてくれたら、スパイアクションの新境地になったかもな~、などと余計なツッコミを入れながら観てしまった。
業界的にうがった見方をすると「ウケを狙ったいやらしいスター映画」と思われかねないが、そんなフィルターを取り外せば古き良きハリウッド製スクリューボール・コメディーのノリを体感できる。粋なセリフとスピード感によって展開のありえなさ具合も気にならず、ポンポンとテンポ良く楽しませてくれる。このタッチは、何かとリアリティーを重視する現代のハリウッド映画には新鮮だ。斜に構えず、リラックスして楽しむことをオススメしたい。
空港で好青年にぶつかり、恋のときめきを感じた美女がとんでもない事態に巻き込まれ、世界各地を命からがら逃げ回るハメに!? というアイデアはなかなかだし、ヴィオラ・デイヴィスやピーター・サースガードを脇に配置したのもまずまず。なのに、まったく面白くない。最大の原因は、主人公たちに恋のケミストリーが感じられないこと。特にキャメロン・ディアスがギャーギャーうるさい。18歳の小娘なら許すが、アラフォー女はもっと落ち着け。それと「かっこいいオレ」にこだわるトム・クルーズは、自画自賛演技に昔のような輝きがないことをわかるべきだろう。
『ミッション:インポッシブル』シリーズのパロディーみたいなスパイ役で熱演のトム・クルーズと、ラブコメの女王キャメロン・ディアスが世界をまたに掛けて飛び回る。それぞれ本領発揮! とはいえ、二人とも賞味期限はもうギリです。離れ小島の隠れ家で目が覚めたらビキニ姿にさせられていたキャメロン、それに対するトムの返答なんて、気恥ずかしい。海パン姿も何かオッサンしてないかい? バイクのスタントも頑張っているけどね、キャメロンのキャピ具合もしんどい。5年前、いや、せめて3年前に観たかったなー。
随所にジェームズ・マンゴールド監督のマジメな性格が出まくりで、トム・クルーズ&キャメロン・ディアスの軽めのキャラをしっかり演出するという水と油の印象をちょい受けた。両者せいぜいロマンス面での歩み寄りが精いっぱいで、目が覚めたら違う場所というシーンも同じような演出で繰り返されると、なかなかクドいものがある。もはや可憐(かれん)な女の子には見えないキャメロンのキャリアを含め、それこそ『バニラ・スカイ』のころに撮っていれば超話題作になっていたはず。