第26回 超先取り!! 第83回アカデミー賞ノミネーション予想!
LA発! ハリウッド・コンフィデンシャル
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超先取り!! 第83回アカデミー賞ノミネーション予想!
街にはもうクリスマスツリーが飾られ、今年もあっという間にラストスパートという感じですね。でも、盛り上がりを見せているのはホリデー商戦だけじゃありませんよ~。そうです、ハリウッドでは、年明けに発表されるアカデミー賞のノミネーションに向けて、予想合戦が開幕しつつあるのです。
そこで、今回のハリコンでは、業界内でのウワサと、わたしの独断と偏見をちりばめつつ! どの作品、そしてどんな俳優がアカデミー賞候補になりそうなのか、超先取りのアカデミー賞ノミネーション予想を実施します!
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皆さんは前回のアカデミー賞のラインアップを覚えていらっしゃるでしょうか? 最多ノミネーションだった『アバター』と『ハート・ロッカー』は、公開前から非常に評判になっており、特に『アバター』においては10年以上も練られた末の超大作だったこと、そして『ハート・ロッカー』は女性監督によるイラク戦争映画ということで、両作品ともオスカー受賞はほぼ確実とされており、予想する側にとってはかなり楽な年だったといえます。
一方、今回のアカデミー賞候補予想はというと……、前回とはずいぶんと異なる様相を呈しています。何といっても一番の相違点は、今回オスカー候補になりそうな作品のほとんどがインデペンデント系のドラマ作品だということです。
前回のノミネーション作品においては、『アバター』はもちろんのこと、サンドラ・ブロック主演の『しあわせの隠れ場所』、クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』、ピクサー作品の『カールじいさんの空飛ぶ家』など、候補作品に華やかさが感じられました。それと比べると、第83回アカデミー賞で候補作品になりそうな映画は生粋のドラマ作品が多そうであり、派手な特撮や銃撃戦が目立つような作品は見当たりません。インディーズ作品だけに、公開もこじんまりとしていて、よ~く注意していないと見逃してしまいそうな作品が目立ちます。
では、さっそく超先取り予想にまいりましょう! 地味でも筋金入りなのが、今回の予想作品のラインナップ。その筆頭を飾るのは、『ソーシャル・ネットワーク』。大学時代に世界中で大人気のSNS、Facebookを創設し、世界で最も若い億万長者にのし上がったマーク・ザッカーバーグというアメリカ人青年の実話を描いた作品です。この映画はとにかく脚本が抜群! 頭脳が明晰(めいせき)過ぎるザッカーバーグ青年のセリフが絶品で、ドラマ好きな映画ファンにはたまらなく魅力的な作品となっています。また、この作品を手掛けたのは、ブラッド・ピットとモーガン・フリーマンが共演した傑作『セブン』を監督したデヴィッド・フィンチャーです。「最近の彼ははごく普通の監督に成り下がった」などと陰口をたたく人もいますが、大人になったフィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』はFacebookを知らない人にもお薦めの秀作といえます。
次の有力候補は、『ソーシャル・ネットワーク』といい勝負、あるいは上をいくかも知れないイギリス映画『ザ・キングス・スピーチ / The King's Speech』(原題)です。言語障害のあったイギリスの王子が、献身的な言語セラピストのおかげで障害を克服し、ジョージ6世として立派な国王になるまでを描いた作品で、こちらも実話を基にしたストーリーです。前回のアカデミー賞では『シングルマン』で、惜しくもオスカーを逃したコリン・ファースがジョージ6世、そして過去にオスカー受賞経験のあるジェフリー・ラッシュが言語セラピストを見事に演じており、すでに公開されているイギリスでは大変な高評価を受けており、早くもアカデミー賞作品賞、そして主演、助演男優賞候補として有力視されています。
続いて、最近になっていきなりホットな話題作となってきたのがマーク・ウォルバーグ、クリスチャン・ベイル、エイミー・アダムスという実力派キャストが名を連ねる作品『ザ・ファイター / The Fighter』(原題)です。実話を基にした、『ロッキー』をほうふつさせる映画で、ヤクザなダメ・ボクサーだった兄(クリスチャン・ベイル)が更生して、マーク・ウォルバーグ演じる弟のボクサーをライト・ウェルター級チャンピオンに導くまでをつづった作品です。評論家たちの反響は賛否両論ですが、11月半ばにロサンゼルスで行なわれた映画祭で上映された際、観客から大絶賛を受けたことで一気に注目を集め出した作品です。
ただし、まだ記憶に新しいミッキー・ローク主演の『レスラー』やヒラリー・スワンク主演の『ミリオンダラー・ベイビー』など、過去のノミネート作品に少し似た系統のスポ根ものがあることが、『ザ・ファイター / The Fighter』(原題)にどういう影響を及ぼすのか、気になるところでもあります。
最後にご紹介する有力候補は、『127アワーズ / 127 Hours』(原題)です。人里離れた山をハイキング中、手を大岩に挟まれ身動きの取れなくなった青年が、生死の選択で自らの腕を切断して生還したという、何ともすごい実話を描いた作品!
主演のジェームズ・フランコの演技があまりにも真に迫っており、その壮絶さに観客が失神したり、具合が悪くなったりといったニュースがさらなる話題を振りまいているようです。わたしも主人と同作を観に行きましたが、ジェームズが手を切断するシーンでは、耳を覆い目をつむっていたウチのだんなさま……(苦笑)。というわけで、大の男もビビるほどのジェームス迫真の演技は、評論家たちの間でかなり評判となっており、現在、主演男優賞の有力候補に挙げられているほどです。また同作の監督が、第81回アカデミー賞を総なめした『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督であるのも魅力の一つといえるでしょう。
11月時点では、まだ全米公開されていない話題作も多々あり、審査対象作品がすべて出そろう12月末から1月にあるゴールデン・グローブ賞の結果次第で候補作品予想にも大きな変動が出るのが定例です。アメリカでは感謝祭を境に、まだまだたくさんの話題作が公開される予定。最終的にどんな作品が予想ラインアップに名を連ねることになるのか、映画ファンにとって非常に楽しみな時期の到来です!
(取材・文 神津明美 / Addie・Akemi・Tosto)
高校留学以来ロサンゼルスに在住し、CMやハリウッド映画の製作助手を経て現在に至る。アカデミー賞のレポートや全米ボックスオフィス考など、Yahoo! Japan、シネマトゥデイなどの媒体で執筆中。全米映画協会(MPAA)公認のフォト・ジャーナリスト。
もうアカデミー賞の時期なんて執筆していても信じられない……。また1年が終わってしまう~!!