小泉なつみ×きくちあつこ「ファッションと映画 ‐映画はオシャレが9割!‐」
オシャレな映画しか、観たくない! かわいくなくちゃ、ヒロインじゃない! ファッションを愛してやまないあなたのために、キュートでスタイリッシュな映画だけをセレクトします。小泉なつみさんのエッセイ&きくちあつこさんのイラストで、オシャレ映画のエッセンスを盗んでしまいましょ!(presented by U-NEXT×シネマトゥデイ/文:小泉なつみ/イラスト:きくちあつこ)
【Theme #1:ガーリー! ガーリー! ガーリー!】
“スペシャルな女の子”を体現するガーリーファッション
先日、とある取材で20代の女性ブロガー数十名と会った。
彼女たちはスーパーインフルエンサー(消費行動に影響を与える人)で、自身のブログやSNSで「コレ、まじかわいい」「今日のコーデのイチオシアイテム」などと発すると、紹介したアイテムの売れ行きがUPするというすんごい存在である。
そんな女子ブロガーたちは死ぬほどかわいく、皆いい匂いがした。おならもラベンダーの匂いがしそうだったので仕事も忘れクンクン&ジロジロしていたところ、ふとあることに気がついた。
それは彼女たちのファッションが皆、
・ふわふわしている
・ゆらゆらしている
・とろみがある
・透けている
・キラキラしている
・クリーミーな色味
上記のどれか(または複数)に当てはまっていることだった。
絶対に透けず、重量があり、角ばったもの、煮しめたような色味、エマール要らずの洋服ばかりがたんすを占めている自分にとって、彼女たちは映画『(500)日のサマー』のヒロイン、サマーを思い起こさせた。
『(500)日のサマー』(2009年製作)
監督:マーク・ウェブ
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ゾーイ・デシャネルほか
『(500)日のサマー』はタイトルそのまんま、サマーに恋した男の子の500日間をつづったものなのだが、主人公がサマーにクラッシュ・オンしてしまう説得力が、ファッションに宿っている。
誰もが「惚れてまうやろ」としか言えない青いワンピースは、サマーファッションの代名詞。揺れて透けてふわふわしているそれは、まさに“夢の女の子”像である。
そしてサマーらしさを決定づけているのが、随所で見られる小物使い。ポニーテールには青いリボンをキュッ、白いブラウスの襟には蝶々のブローチをONと、ガーリーな仕事っぷりがそこかしこにさえわたっていて、思わずうなってしまう。
そんなサマーに関して劇中、こんなナレーションが入る。
「サマーは身長も体重も平均的な女の子だが、彼女がバイトしたアイスクリーム屋はなぜか売上が倍増し、バスに乗れば誰もがサマーを振り返らずにいられない」
つまりサマーは一般に存在する普通の女の子であると同時に、特別な女の子なのである。そして彼女自身も自分がスペシャルであることに自覚的であり、その役割を“ガーリーファッション”というかたちで自ら全うしているのだ。
『(500)日のサマー』と同じくロスを舞台にした文化系男子の恋物語『ルビー・スパークス』のガーリーファッションもまた、“特別な女の子”を体現している1本。
『ルビー・スパークス』(2012年製作)
監督:ジョナサン・デイトン / ヴァレリー・ファリス
出演:ポール・ダノ、ゾーイ・カザンほか
サマーは演じるゾーイ・デシャネルの瞳の色に合わせて青を基調としていたが、『ルビー・スパークス』のルビーは赤毛で原色系のファッションが特徴。重めバングス、ハイウエストな着こなし&洋服選びはサマーと同様で、ガーリー要素として欠かせぬポイントだ。
そしてもう1本、『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニーことエマ・ワトソンがヒロインを演じた『ウォールフラワー』もオススメ。デコ出しにカチューシャ、高校のスタジャン×チェックのプリーツスカートはいかにもプレッピーで、主人公男子をノックアウトする魅力がさく裂している。
『ウォールフラワー』(2012年製作)
監督:スティーヴン・チョボスキー
出演:ローガン・ラーマン、エマ・ワトソンほか
ガーリーな洋服でキメるのには抵抗があっても、キラキラ・ふわふわしたものを愛でるのは楽しいもの。ダルダルに首が伸びたTシャツと膝が抜けそうなスウェットで3作品を観ながら、ヒロインたちに胸ときめいたわたしです。