「ウォーキング・デッド」ユージーンの魅力~困ったちゃんなのになぜか憎めない?
ウォーキング・デッドの魅力
「ウォーキング・デッド」シーズン9の放送開始の前に、主な登場人物たちの魅力をもう一度、振り返っておこう。第6回目はユージーン(ジョシュ・マクダーミット)。彼の行動からは目が離せない!?(平沢薫)
※ご注意※ なおこのコンテンツは「ウォーキング・デッド」シーズン8までをがっつり観た人向けですので、未見の場合は衝撃のネタバレが含まれることがあります! ご注意ください。
ウォーキング・デッドの魅力 連載第6回 ユージーン・ポーター
最初はまったく魅力的に見えないけど…
ユージーンは、最初はまったく魅力的には見えないけど、後からどんどん憎めない人物になっていくユニークなキャラ。
小太りでハンサムでもなく、何と言っても後ろに撫でつけて長く伸ばしたヘアスタイルがヘン。化学的知識は豊富だが、コミュニケーション能力に問題があって他人とうまく交流できず、普通は言いにくいことを平気で口に出したりする。戦闘能力はものすごく低い。普通ならとっくにウォーカーたちにやられているような人物だ。
が、そうならなかった理由はただ一つ。彼は、自分は優れた科学者で人類を救う方法を知っており、そのためワシントンD.C.に行かなければならないと主張し、それを信じたエイブラハム(マイケル・カドリッツ)たちに守られて旅をするのだ。この人類を救う知識を持ってなければ、ただの困ったちゃんキャラでしかない。それなのに、なんと、この唯一の長所がウソだったと判明する。しかし、不思議なことに、ユージーンが魅力的になっていくのは、このウソを告白してからなのだ。
ウソを告白してからは、仲間の一員に
ユージーンがウソを告白することができたのは、リック(アンドリュー・リンカーン)一行のタラ(アラナ・マスターソン)に“人間は変わることができる”と言われ、“仲間”として認められたから。
ユージーンはタラに“迷ったときには誰かを助けることを選べ”と言われて、バスが爆発した状況ではタラを助ける。タラと2人になったときに、「私は、一人では生き残れないと判断できる。病気から世界を救えなければ、私は無価値だ。見捨てられ、物資も配分されず、守ってもらえない」と言うと、タラは「守るよ。仲間でしょ。仲間は協力し合うものなのよ、お互いに」と言う。
この会話があったので、次にワシントンD.C.に急ぐかどうかでグループ内に対立が起きた際には、自分がウソをついていたことを告白する、「私は科学者じゃない。ウソをついた。世界を救えない」。そしてこれ以降、ユージーンは少しずつ変化し、仲間たちを逃がすためにおとりの車両を運転するなど、自分以外の人々のための行動ができるようになる。
それでも、臆病者なのは変わらない
しかしながら、そこでもガラッと変貌するわけではないのが、ユージーンのキャラクターのユニークなところ。彼は“仲間”の一員であることに目覚めても、コミュニケーション障害であることに変わりはなく、臆病でもあることも変わらず、自分が“臆病者”のままであることを隠さない。
彼が自分の臆病さを宣言するシーンは印象的だ。彼は謎の集団“救世主”の独裁者的リーダー、ニーガン(ジェフリー・ディーン・モーガン)に捕らわれて、食事や住居を与えられると、彼のために銃弾を製造するようになる。そしてサシャ(ソネクア・マーティン=グリーン)やロジータ(クリスチャン・セラトス)が彼を救出しにきても従わず、「私は、パンツを濡らすような恐怖を繰り返し体験してきた。でもここなら怖くない。生きていられる。状況に適応して変わるんだ」と言う。彼の臆病者であることを隠さない正直さは、ある意味、魅了的にも見えてくる。
仲間?それとも臆病者?行動が予測できない
しかし、だからユージーンは、“仲間”として行動するのか、“臆病者”として行動するのか、予測できない。いつも思った通りのことを口に出しているのにもかかわらず、次にどんな行動をするのかわからないという、とてもユニークなキャラクターなのだ。
例えば、ニーガンに捕らえられたサシャを助けはしないが、彼女が自分のための毒薬を望むとそれを与える。また、ドワイト(オースティン・アメリオ)が敵側に情報を流していることを知っても、本人にはやめろというが密告はしない。ユージーンはだんだん不眠症になっていき、ニーガンの妻の一人に「ここを変えてよくすることも出来たのに、保身に走った。だから苦しいのよ」と指摘されるが、それでも、ニーガンのための銃弾製造を真面目に続けているように見える。なので、最後の戦いで、彼がニーガン側の銃弾がみな暴発し、それがユージーンの計画だったことがわかると驚かされてしまうのだ。
そんなユージーンはシーズン8の最後でも健在で、リックたちの元に戻っている。シーズン9ではどんな動き方をするのか、まだまだ今後が予測できないキャラなのだ。
原作コミックでのユージーン・ポーター
臆病なのと嘘をつくのは原作と同じ。大きな違いは、原作ではコミュニケーション障害ではないこと。TV版では元の職業は不明だが、原作では高校の化学の教師だった。また、TV版では彼がニーガンのためにわざと暴発する弾丸を作り、そのためリック側が戦いに勝つが、原作にはこのエピソードはない。
奇妙な髪型は同じだが、理由はかなり違う。どちらも髪型の理由は本人が語るが、TV版では「(後に嘘だとわかるが)研究所の上司である高名な科学者が、楽しい髪型だと気に入ってくれたから」、原作では「自分が知的人間だということを隠すため」。原作ではロジータが好きで、エイブラハムと三角関係になる。
【この人にも注目 タラ・チャンブラー】
元警察学校の生徒で、誰にでも暖かく接する性格。同性愛者で、医大生デニースに愛を告白したこともある。ガバナー(総督)が出会ったチャンブラー一家の一員で、ガバナーたちと刑務所を襲撃してグレンに出会い、リックたちのグループの一員になる。彼女のフレンドリーな性格がドラマを動かすことが少なくなく、彼女がユージーンに暖かな言葉をかけたことが、ユージーンの心境が変化するきっかけに。また、海辺で暮らす女性の共同体オーシャンサイドに出会った時も、一緒に暮らして信頼を得た。シーズン9でもその性格を発揮しそう?
原作コミックでのタラ・チャンブラー
原作には、ガバナーがタラの一家と暮らす話は丸ごとない。なので、タラも登場しない。
次回はキャロル・ ペルティエ! お楽しみに!
【ウォーキング・デッドキャラの魅力解剖連載予定】
vol.0 「ウォーキング・デッド」シーズン9を前に魅力を再確認!
vol.2 ダリル・ディクソンの魅力~無口な一匹狼なのに優しい
vol.3 マギー・リーの魅力~愛することで強くなっていく愛の人
vol.6 ユージーンの魅力~困ったちゃんなのになぜか憎めない?
vol.7 キャロル・ ペルティエ
vol.8 リック・グリムス