密輸 1970 (2023):映画短評
密輸 1970 (2023)ライター2人の平均評価: 4
改めて「リュ・スンワン監督に一生付いてゆく」宣言!
水中アクションだけではない。目や耳をみっちりヒートさせ、胸の奥の血潮を滾らせてくれながら、にもかかわらず体感はスカッと清々しい「納涼シネマ」。今時、映画でこんなにも嬉しい“おもてなし”を享受できるとは!
海女さんたち、密輸ビジネスに手を染めてしまうの巻である。が、一見荒唐無稽でもベースとなる社会背景、人物造形のディテールに1970年代の史実が横たわっており、ノリとして愛しの東映JUNK ムービーと共振しつつもその点では一線を画すか。主演二人は無論のこと、コ・ミンシ扮する喫茶店オーナーの心意気に打たれる。デビュー作から贔屓だったが、ここで改めて「リュ・スンワン監督に一生付いてゆく」宣言を――。
70年代気分が楽しい海女たちのクライム・アクション
「海女たちの金塊強奪大作戦'70」みたいなカル~いノリのタイトルがお似合いかも。漁村の海女たちが、海底から密輸金塊を引き上げることになり、税関、密輸王、町のチンピラと強奪戦を繰り広げる。騙し騙されのコンゲームの真相が「実はその前に」と何度も時間を遡って解明されるのも楽しく、権力にも暴力にも屈しない女たちが逞しい。
もう一つの魅力は、舞台となる1970年代のレトロでイケイケな空気感。全編に流れる当時の韓国の大ヒット曲の数々は、日本の昭和歌謡の味わい。ファッションも70年代のカラフルさ。分割画面を多用する演出も当時風。エンドクレジットの後におまけシーンがあるので、それもお見逃しなく。