ドライブ・イン・マンハッタン (2023):映画短評
ドライブ・イン・マンハッタン (2023)
ライター2人の平均評価: 3.5
教会の告解室のように自己開示が始まるイエローキャブの車内
『ナイト・オン・ザ・プラネット』から伸びてきた道と『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の交差点といった趣か。“動く密室”であり運転手と乗客の一期一会の場所である走行中のタクシーで現在進行形の人間ドラマが展開する。元々舞台劇として構想されたが、NYクイーンズのケネディ空港からマンハッタンのミッドタウンまで夜景の移動が伴い、都市空間のロードムービーとしての臨場感を手に入れた。
監督はクリスティ・ホール。彼女が脚本&製作を手掛けた『ふたりで終わらせる』等から連なる男性性や性的搾取をめぐる主題が、二人芝居=W主演のダコタ・ジョンソン(兼製作)とショーン・ペンの過去作品イメージを確かに更新させる。
ふたりの魅力的な役者が引っ張る
限られた空間でふたりの人物がひたすら話すという設定で、元々舞台劇として書かれたというのは納得。トム・ハーディのひとり芝居でやはり車中が舞台の「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」のようなサスペンスでもなく、運転手と客のおしゃべりを通じてそれぞれの人生が少しずつ見えていくというゆったりした展開。話題は非常にプライベートな事柄にも及ぶが、2度と会うことがない相手だし、そこは無理なく受け入れられる。もう少し何か欲しかった気もしなくはないものの、この魅力的な俳優ふたりと一緒にしばしドライブを楽しめるのは素敵。最近プロデュースに乗り出したジョンソンが新たな才能の手助けをし続けていることにも拍手。