私の少女 (2014):映画短評
私の少女 (2014)ライター2人の平均評価: 4.5
“鉄板”のキャスティング、二人の共演に心がザワつく
ここぞという場面での感情の吐露も見事だが、一見無表情、実は複雑な“中間表情”も卓抜。W主演の二人についてである。“よそ者”として排他的な村に赴任した警察署長ぺ・ドゥナ。そもそも誰からも愛されていない“疎外者”の少女キム・セロン。この“エイリアン”たちが運命の遭遇を果たし、自分の居場所を獲得するため、闘争する。
……いや、ちょっと飾って書きすぎたか? 二人はまるで“罰ゲーム”に陥れられたように不幸のつるべ打ちによって追い詰められてゆくのだ。そのゲスくてヤバい、しかし、確かな抒情で包みこまれた2時間。『影の車』『鬼畜』『震える舌』といった、野村芳太郎監督の手による“子供の受難劇”を思いだした。
個VS社会という日常の戦争
ずばり傑作。残酷な現実に立ち向かう女性ふたり――ペ・ドゥナ(私)とキム・セロン(少女)が凛々しく美しい!
閉鎖的なコミュニティでの児童虐待、といえば『トガニ 幼き瞳の告発』等があるが、こちらはさらに複雑で、婦警の“ある秘密”を軸に現代社会の諸問題が重層的に渦巻く。ひりひりとリアルでありつつ、清澄な詩情と寓話的な美しさを湛えた作風は、同じくイ・チャンドンのプロデュースで、女性の新人監督が手掛けた『冬の小鳥』に通じるものだ。加えてこちらはミステリーの味わいもある。
エンドクレジットの是枝裕和の名にも注目。だがむしろ本作に強い影響を与えたのは岩井俊二の『リリイ・シュシュのすべて』でないかと思う。