第71回カンヌ国際映画祭(2018年)コンペティション部門21作品紹介(2/3)
第71回カンヌ国際映画祭
<脚本賞>ジャファール・パナヒ『スリー・フェイシズ(原題) / 3 Faces』
製作国:イラン
監督:ジャファール・パナヒ
キャスト:ベヘナーズ・ジャファリ、ジャファール・パナヒ
【ストーリー】 イランの女優ベヘナーズ・ジャファリ(本人役)のもとに、厳格な家族に反対され、女優の夢を追えずに自殺する少女のビデオが送られてくる。少女は映像の中で、助けを求めたのにもかかわらず、何もしてくれなかったとジャファリを責めていて……。彼女は映像の真贋を確かめるために、パナヒ監督(本人役)と映像が撮られた田舎へ向かう。
【ここに注目】 カンヌ(『白い風船』)、ベネチア(『チャドルと生きる』)、ベルリン(『人生タクシー』)と、世界3大映画祭での受賞歴を誇るイランの名匠パナヒ監督。反体制的な活動を理由に、イラン政府から20年間の映画製作禁止令を出されているが、屈することなく精力的に創作を続けている。国外への渡航が許可されていないパナヒ監督に、今回は映画祭出席が認められたとのウワサもあるが果たして!?
<特別審査員賞>『イメージ・ブック(英題) / Image Book』
製作国:スイス
監督:ジャン=リュック・ゴダール
キャスト:N/A
【ストーリー】 本来、人はどのように思考し、それを積み重ねるのか。夢や感情から生み出されるイメージとはいったい……?(ストーリーの詳細については不明)
【ここに注目】 ヌーベル・バーグの生きる伝説、ゴダール監督が83歳でカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した3D映画『さらば、愛の言葉よ』から4年振りに発表する新作。詳細は謎に包まれているものの、内容は現代のアラブ世界についての考察で、アーカイブ映像やドキュメンタリー、フィクションが交錯する作品になっているよう。
『寝ても覚めても』
製作国:日本、フランス
監督:濱口竜介
キャスト:東出昌大、唐田えりか
【ストーリー】 東京のカフェで働く朝子は、コーヒーの配達先の会社で亮平と出会う。朝子は自分への思いをストレートにぶつけてくる亮平に、最初は面食らいながらも次第に惹かれるようになるが、彼女はある秘密を抱えていた。
【ここに注目】 東出昌大が一人二役に挑戦し、芥川賞作家の柴崎友香の同名小説を映画化したラブストーリー。ヒロインには今作で本格的なスクリーンデビューを飾る唐田えりかを抜てき。瀬戸康史や渡辺大知、田中美佐子らが脇を固め、同じ顔の2人の男性と1人の女性が織りなす恋愛模様を、しなやかに描き出す。『ハッピーアワー』で注目を浴びた、濱口監督の最新作に熱い視線が注がれる。
『エブリバディ・ノウズ(英題) / Everybody Knows』
製作国:フランス、スペイン、イタリア
監督:アスガー・ファルハディ
キャスト:ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム
【ストーリー】 ブエノスアイレスで暮らすスペイン人のカロリナは、マドリッド郊外にある生まれ故郷に子供たちと一緒に帰省する。だが、その旅は思いがけない過去のパンドラの箱を開けることになり、彼らはただ狼狽する。
【ここに注目】 実生活でも夫婦であるスペインのビッグ・カップル、ペネロペ&ハビエルが共演を果たして放つサスペンスドラマ。『セールスマン』などのイランの名匠ファルハディ監督が、スペインに帰郷したある夫婦の間に生まれる微妙なズレを緊迫感たっぷりに描き出す。『しあわせな人生の選択』などのアルゼンチンを代表する俳優リカルド・ダリンら国際派俳優と、実力派監督のタッグに期待が高まる。
『アット・ウォー(英題) / At War』
製作国:フランス
監督:ステファヌ・ブリゼ
キャスト:ヴァンサン・ランドン
【ストーリー】 記録的な利益を上げながらも、従業員は賃金面での犠牲を強いられていたペリン・インダストリー工場。だが、工場の全面閉鎖が決まる。会社の一方的な決定に抵抗し、雇用を守るため、広報のローラン・アメデオは1,100人の従業員のスポークスマンとなって戦う。
【ここに注目】 ブリゼ監督は3年前の本映画祭コンペティション部門に『ティエリー・トグルドーの憂鬱』を出品、主演を務めたヴァンサン・ランドンが男優賞を受賞した。そのコンビが4度目のタッグを組んだ社会派ドラマ。ブリゼ監督は、「雇用保護対策の報道には暴力の目撃者ばかりが映し出される。メディアの映像の後ろにあるものを理解するために、この映画を作った」と語っている。
『ザ・ワイルド・ペアー・ツリー(英題) / The Wild Pear Tree』
製作国:トルコ、フランス、ドイツ、ブルガリア、マケドニア、旧ユーゴスラビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、スウェーデン
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
キャスト:セルカン・ケスキン、ハザール・エルギチュル
【ストーリー】 文学を愛し、作家になることを夢見てきたスィナンは、生まれ育った村に戻り、心血を注いだ作品を出版するため、資金をかき集める。ところが、父親の借金という大きな壁が立ちはだかり苦悩する。
【ここに注目】 重厚なストーリーテリングで知られる、トルコの巨匠ジェイラン監督。これまで本映画祭では、2002年の『冬の街』と2011年の『昔々、アナトリアで』でグランプリを、2008年の『Three Monkeys ~愚かなる連鎖~』で監督賞を受賞。2014年の前作『雪の轍』では、パルムドール賞に輝くなど、過去4作品が受賞に直結しており、新作の出来映えに期待が募る。
『ナイフ・アンド・ハート(英題) / Knife + Heart』
製作国:フランス、メキシコ、スイス
監督:ヤン・ゴンザレス
キャスト:ヴァネッサ・パラディ、ケイト・モラン
【ストーリー】 1979年夏のパリ。ゲイ・ポルノのプロデューサーのアンヌは、彼女のもとを去った編集者で恋人のロイスを取り戻そうとアーチボルドと共謀して野心的な映画を製作することに。しかし、俳優の1人が殺害され、アンヌは奇妙な捜査に巻き込まれる。
【ここに注目】 長編デビュー作『真夜中過ぎの出会い』が、本映画祭のカメラドール部門と批評家週間で上映されたフランスの新星ゴンザレス監督の長編2作目は、ミュージシャンで女優のヴァネッサ・パラディを主演に迎えたラブ・スリラー。監督の弟アンソニー・ゴンザレスのソロ・プロジェクトであり、トム・クルーズ主演作『オブリビオン』などの音楽を担当しているフランスの人気エレクトロ・バンドM83が音楽を担当している。