大山くまお

大山くまお

略歴: 編集者を経てライターに。映画、ドラマ、アニメなどについて各メディアに寄稿。「文春野球」中日ドラゴンズ監督を務める。

近況: YouTube「ダブルダイナマイトのおしゃべり映画館2022」をほぼ週1回のペースで更新中です。

サイト: https://www.youtube.com/channel/UCmdesdmNuJ2UPpAQnzkh29Q/featured

大山くまお さんの映画短評

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  • 映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記
    今度の敵はアテンション・エコノミーの権化
    ★★★★★

    リアルタッチの恐竜が大暴れして、しんちゃんをはじめお馴染みのキャラが定番のギャグをやりつつ、かけがえのないひと夏の経験をする。最近出番の少なかったシロの頑張りも堪能できる。コンセプトは十分に達成している作品だと思う。突拍子のない恐竜ギャグも、一緒に見ていた子どもたちには大変受けていた。悪役が自己承認欲求とアテンション・エコノミーの権化のような人物であり(毒親でもある)、首尾一貫した行動をしないのが面白い。賛否両論ある結末については、何らかの前置きが必要だったのでは。北村匠海が演じたビリーというキャラの幼稚な純粋さはとことんタチが悪いのだが、作り手はどこまで意識していたのだろうか。

  • マミー
    問題提起のドキュメンタリーでありながら犯罪映画を見る気分に
    ★★★★

    マスコミ(と一般人)の異常なほどの過熱ぶり、地方都市の閉鎖性、一方的な捜査と化学的な検証によって覆る証拠、証言を拒否する関係者たち……。「毒婦」とまで称されてセンセーショナルに報じられた林真須美被告は冤罪じゃないのか。そう思わせる一方で、林夫婦の保険金詐欺の実態が描かれると思わず絶句してしまう。そして事件にのめりこんでダークサイドに足を一歩踏み込んでしまう二村監督。問題提起を行うドキュメンタリーでありつつ、強いストーリーテリングと映像によって思わず犯罪と家族をテーマにした韓国映画を見ているような気分になる。エンターテイメントとして成り立っているからこそ、本作は力が強い。

  • インサイド・ヘッド2
    思春期の物語だけど、私たちの物語でもある
    ★★★★★

    今度のテーマはズバリ「思春期」。感情の数が一気に倍になることで思春期の複雑さを表現している。ティーンの揺れる感情と行動の裏側を見事に絵解きしているが、これは同時に私たちの物語でもある。人はあるとき突然、友情や人としての優しさを忘れ、打算的な行動や利己的な行動を取ったり、他人を貶めたりすることがある(よくいるでしょ?)。それはある一つの感情に支配されて行動してしまうからだということが、この作品を見るとよくわかる。物語を盛り込みすぎず、シンプルにしているので非常に見やすく、同時に心の問題についても考えをめぐらすことができる。高難度の役割を見事に果たした日本語吹替版の小清水亜美にも拍手。

  • ルックバック
    死と和解できるのは創造の中だけだ
    ★★★★

    才能、嫉妬、努力、焦燥、友情、歓喜、喪失、絶望、執念とかがないまぜになって、美しい四季の風景とともに、突風のように吹き抜けていく58分。原作マンガは静謐さが印象的だったが、アニメになったことで藤野と京本の体温や息遣いが伝わってくる。京本の告白を聞いた藤野が、雨に打たれながらダイナミックに走る場面が素晴らしい。クリエイションに関わる人に限らずとも、こういう瞬間を経験したことがある人は、どんなに苦しくて辛くても、何かに打ち込み続けることができるのだろう。原作者の藤本タツキは「死と和解できるのは創造の中だけだ」という言葉を大切にしているという。何があっても描き続ける藤野の後ろ姿が尊い。

  • Ultraman: Rising
    育児ノイローゼになるウルトラマンを見るとは
    ★★★★

    「子育て」と「家族の再生」を通して主人公が成長していく姿が描かれる新たなウルトラマンのストーリー。育児ノイローゼになるウルトラマンを見るとは思わなかった。それだけ普遍的なテーマを扱っているということ。ウルトラマンを「人と怪獣の架け橋」と再定義しているのは、『ウルトラマンコスモス』へのオマージュかも(どこか『REX 恐竜物語』風でもある)。従来はウルトラマンをサポートする防衛軍との戦いという設定も面白い。クライマックスは日本でも人気の高かった某ロボット映画を思い出させる。シャノン・ティンドル監督のウルトラマンと日本への愛情は本物で、東京ドーム周辺の町並みまで完全に再現しているのに驚かされた。

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