清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

« Prev 全380件中251~255件を表示しています。 Next »
  • シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
    正義の戦いが招く災害を直視し、笑いの配合も絶妙なヒーロー内戦
    ★★★★

     世界情勢を巧妙に反映させた作劇に唸った。正義の戦いが招く、罪無き人々を巻き込む災害。憎しみの情念が引き起こす、果てしなき復讐の連鎖。鍵を握る過去を1991年に設定したのは、冷戦終了と湾岸戦争勃発という現在のルーツを意識したに違いない。
     ヒーローによる災害や内部抗争といえば、すでに平成ガメラや平成ライダーが挑んできたテーマだが、マーベルはシリアスになりすぎることなく壮絶なアクションにユーモアを織り込む余裕さえみせる。今回笑いを担うのは、アベンジャーズの一員ではないスパイダーマンとアントマンの、意外性ある活躍。ザック・スナイダーによるDCの重厚沈鬱路線は、かなり水をあけられてしまった感がある。

  • ちはやふる −下の句−
    広瀬すず17歳の動物的な瞬発力と伸びやかな身体に魅せられて
    ★★★★

     TVシリーズ第1話の直後、いきなり最終話を迎えたかのようなフラストレーションに襲われる“もどかしき前後編分割問題”は大手配給会社が知恵を絞って改善すべきだが、興行的打算はともかく、本作は恋のベクトルの絡まりあいと仲間の結束を描くバランス配分も程よく、各ショットが実に心地よくデザインされた青春映画として爽やかな余韻を残す。ラスボス松岡茉優の貫禄は流石だが、何よりジャージから着物への振り幅を往き来する、広瀬すずの表情が多面的で豊かだ。子供のようながむしゃらさと、凛とした少女の魂の同居。17歳の動物的な瞬発力と伸びやかな身体を収めた映像が傑出している。

  • 太陽
    神木隆之介の地団駄が希望のリズムとして響き渡る超格差社会SF
    ★★★★

     ディストピアへと向かう近未来。太陽の下では生きられないエリート新人類と、貧しいながらも太陽に愛された旧人類。この国のシンボル“太陽”に分け隔てられたSF設定が暗示するものは奥深い。入江悠演出は土着的な旧人類コミュニティに照準を定め、弱者に寄り添う。地方と都会の格差を描いた往年の日本映画の苦さを持ち合わせているが、この架空の村の鬱屈と叫びは、あくまでも今現在の明日なき若者の心情そのもの。それを体現する門脇麦の戸惑いと苦悩が全編を覆う中、神木隆之介の焦燥と地団駄が希望のリズムとして響き渡る。近藤龍人キャメラマンが描き出すススキの原が黄金色に煌めく光景は、絶望の中の一縷の望みの象徴として美しい。

  • ズートピア
    差別や暴力がはびこる社会の現実を子供達にしっかり伝える新機軸
    ★★★★★

     表向きは動物版イッツ・ア・スモールワールドのような理想郷のようでいて、その裏側は世知辛く、差別や暴力がはびこっている。権力者の二面性をも暴く脚本が鋭い。人間社会の縮図を見せ、それでも障壁を乗り越えていく小さなヒロインの奮闘を、笑いと涙で包み込む。伝統に則し、前向きなキャラと夢を設定しつつも、生きづらい現実を描く新機軸に、ピクサーと融合して復調10年目のディズニーの自信と余裕がみてとれる。『アナ雪』で同時代のヒロインの新たな幸福観を提示したディズニーアニメ。ここでは子供向けだと割り切らず、成長した子供たちを取り巻く世界の描き方においても、メルクマールとなる作品を打ち出すことに成功した。

  • レヴェナント:蘇えりし者
    3Dなしで情念を体感させるキャメラの存在感はディカプリオ以上
    ★★★★★

     開拓時代を背景とする物語は、ごくシンプルな復讐譚。ディカプリオの執念の演技は凄絶極まりないが、話すことも身動きさえ出来ず、耐える時間が長い。映画史に残る作品へと高めたもの、それは撮影の力だ。自然光を貫き、ワンシーン・ワンカットに挑む撮影監督エマニュエル・ルベツキのキャメラワークが、役者以上の存在感を放つ。人間の視野にも匹敵する広角レンズによる長回しは、筆舌に尽くしがたい。イニャリトゥ監督にとって『バードマン』がスーパーヒーロー映画へのアンチテーゼならば、本作は3Dへの批評的見解である。大自然に放り出された人間の情念を、3Dという“飛び道具”を用いることなく体感させることに見事に成功している。

« Prev 全380件中251~255件を表示しています。 Next »
[PR]
おすすめ特集
映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク