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太陽 (2016):映画短評

太陽 (2016)

2016年4月23日公開 129分

太陽
(C) 2015「太陽」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

ミルクマン斉藤

私たちは明日の太陽を見ることができるだろうか。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

進化はしたが太陽の下で生存不能になった新人類と、彼らの支配に甘んじ貧しい生活を強いられる旧人類、ふたつに分かたれた近未来日本の群像劇……なんて書くと、昨今流行りの米製ヤングアダルトSFみたいだがまったく違う。“旧人類”の神木隆之介、門脇麦らが出口の見えない明日にもがく姿は、入江悠が『SR サイタマノラッパー』シリーズで描いた地方の若者の鬱屈に直結。驚異の移動長回し話術は今回も随所で堪能できるが、名キャメラマン近藤龍人の手でさらに深化。太陽に当った人体が煙上げ始めたりする特殊効果まで加えても、長回しならではのスペクタクル感は損なわれておらず、しかも光と影の美しさがもう格別!

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

人間という不完全な生き物の本質を捉えた傑作

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 未知のウィルス蔓延で人口が激減した近未来。世界は感染によって進化した新人類と、感染を免れた旧人類に分断される。いわゆるディストピア系のSFドラマだ。
 豊かな新人類と貧しい旧人類。本作の鋭さは強者=悪、弱者=善という社会正義的なステレオタイプを逆手に取った点。あらゆる負の感情を制御し合理性を貫くことで発展する新人類。かたや旧人類は、嫉妬や憎しみなど負の感情によって自滅していく。
 確かに極端な設定の寓話だが、しかし人間という不完全な生き物の本質は見事に捉えている。劣等感にまみれた村人たちの暴走が集団リンチへ発展する過程は圧巻。一方、両者の若者が歩み寄ることで人間性に希望も見出す。これは傑作。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

神木隆之介の地団駄が希望のリズムとして響き渡る超格差社会SF

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ディストピアへと向かう近未来。太陽の下では生きられないエリート新人類と、貧しいながらも太陽に愛された旧人類。この国のシンボル“太陽”に分け隔てられたSF設定が暗示するものは奥深い。入江悠演出は土着的な旧人類コミュニティに照準を定め、弱者に寄り添う。地方と都会の格差を描いた往年の日本映画の苦さを持ち合わせているが、この架空の村の鬱屈と叫びは、あくまでも今現在の明日なき若者の心情そのもの。それを体現する門脇麦の戸惑いと苦悩が全編を覆う中、神木隆之介の焦燥と地団駄が希望のリズムとして響き渡る。近藤龍人キャメラマンが描き出すススキの原が黄金色に煌めく光景は、絶望の中の一縷の望みの象徴として美しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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